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13話
唇を奪われ蔵之介は目を見開く。二度目の口づけ。慌てて押し返そうと胸を押すがむしろ強く抱きしめられ、頬を添えられた手でゆっくり撫でられる。さらに深く舌が絡み合った。蔵之介はぞくぞくと肩を震わせる。
男の手がやっと緩み、男の胸を押して体を離す。
「なっ、なんでキスするんですか!?」
蔵之介は口を手の甲で多い顔を赤らめる。
「なぜって、大切な人間にはこうするものだろ?
確かに、大切な人にはするかもしれないが。初めて会った相手にするものでは無い。それに大切ってそんな簡単に決められるものなのだろうか?
しかし
「大切?」
その言葉が心をゆりほどく。
認めてもらえなかった蔵之介が求めていたもの。認めて欲しい、大切にして欲しい。そんな
ことがかなうのは一生ないのだろう。失望していた蔵之介の胸が、その言葉で暖かさを取り戻していた。期待してしまう。
男は手から糸を出し、木に投げつけた。蔵之介は抱きかかえ上げられ、その蜘蛛の糸が縮無と同時に二人で飛び上がった。糸を張り替え飛び移り移動をしていく。
少し進むと突然木の上に蜘蛛の糸の床が現れる。
男はそれに飛び乗ると蔵之介をおろした。
「その靴なら蜘蛛の糸にはくっつかない。しかし、滑り落ちたら終わりだ。気をつけて」
そう言うと、男は蔵之介の手を引いて歩き出した。
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