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14話 蜘蛛の城へ
暗い道を二人で手をつなぎながら歩いた。蜘蛛の糸の足場は丈夫で、きしむことも揺れることも無かった。何層にも固い糸と柔らかい粘り気のある糸を重ね作られていると、男に教えて貰った。
「どこに向かってるんですか?」
「我々の村だよ」
すると突然の暗闇だった空が急に明るくなる。
思わず目を閉じた。目が明かりになれると、そこには白い世界が広がっていた。
どこか昔の日本を思わせるような建物が並び、屋根には白い瓦が並ぶ。
やはりくもの糸で出来ているから白いのだろうか?
蔵之介はその光景を見て少し感動していた。
「すごい、雪が降ったみたいだ」
蔵之介は嬉しそうに言って、白い衣の男を見た。男はほほ笑んで、頷く。
「君は面白いことをいうね」
怖い思いはしたが、この人といると安心できた。ここに来るまでも気遣ってくれていた。話を聞いていると生贄とは言っても、食われたり襲われたりする心配は無さそうに感じる。
街では所々でなにかがキラキラ光るのが見える。それが何かはここからではわからない。
蔵之介は再び男を見ると、変わらずこちらを見つめていた。少しどきりとして、何も無かったかのように街に目を戻す。しかし、男の笑顔に体が熱くなっていた。なぜか恥ずかしさもこみあげてくる。
「あの、なんでこんな白いの?蜘蛛の糸で出来てるから?」
「それは僕が生贄を手に入れたからだよ。これから100年、白い世界が続くんだ。最高だろ?」
男は手で城のような高い建物を示し嬉しそうに笑う。
「って事はさっきまではちがったの?」
「そう、100年前の勝者は、人間の世界の名前で言えばセアカゴケグモ。みんな毒に負けたんだ。そのせいで黒に赤い装飾が施された街だったとても暗い世界で住みづらくてたまらなかった」
セアカゴケグモ、蜘蛛に詳しく無くても聞いたことがある人は多くいる種だ。蔵之介ももちろん知っている名前だった。
猛毒を持つ種類の蜘蛛で、日本にいる個体の毒は弱い。でも毒には変わりはなく忌み嫌われ、見つかればすぐに駆除される対象だ。
そして黒い世界。それを想像すると、住みにくく陰湿な雰囲気をしていそうだった。それとはうって変わって、今の世界は明るい。蔵之介にも過ごしやすそうに思えた。カラーが無いのは味気なく、ちょっとまぶしい気もするけど。
「さっきまで周りが暗かったのってそのせい?」
「そうだよ、ここは蜘蛛の糸が城壁の様に各所に張り巡らされてる。一本の糸自体は細いからさほど変化はないが、何層にも張り巡らされている。それが黒い糸で生成されていたから、遠くから見れば真っ暗になっていたんだ。順次白い糸に変わっていくから、さっきの場所も明るくなるよ」
蔵之介は納得し頷いた。
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