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15話
「さ、即位式だ。君は隣で立っていれば大丈夫だから」
そして男はこう付け加えた。
「今日から僕がこの国の王だ」
男はニコリと笑い、蔵之の手をとり歩んだ。
その優しいしぐさにドキリとして蔵之介は逆らうことはせず従った。
即位式はとても賑わい、盛大に祝われた。
花が舞い、多くの人が王を見るために集まった。
王が手を振ると歓声があがり、蔵之介も手を振るよう指示され手を振るとそれ以上の歓声が上がった。
蔵之介は良い身分にでもなった気がして、恥ずかしくなり苦笑した。王は蔵之介の腰に手を添え抱き寄せると、指笛がなり蜘蛛の糸が舞った。
これは祝われている証らしい。
「やはり彼が王に」
「そうだと思った」
そうささやかれるの声が聞こえた。
この王が即位するのは想定されていたものだったようだ。
即位式の挨拶が終わると、部屋に案内された。
ドアを開けると、一人で過ごすには広すぎる部屋だった。生活に必要なちょっと変わった形の家具が並ぶ、引き出しに本棚、クローゼット、ローテーブルとソファ。広い部屋は屏風で区切られ、その奥にはダブルベッドと、机と椅子が並んでいた。入ったドアから右サイドの壁にあるドアを開けるとシャワールームとトイレがある。トイレは家で使っていた水洗トイレと同じ様式の物だった。
「トイレは同じなんだ」
異世界に来たような感覚なのに、日本に戻された気がした。
不思議な世界観のある部屋の中を一通り見て歩いた。
ドアの両サイドに細い廊下が伸び、その先にもドアがあった。
そこを開けるとベッドがいくつか並び机や引き出し。簡易な作りではあるが、誰かが過ごすための部屋があった。同じ作りの部屋が反対側にもあった。
先ほど歩いた部屋にもダブルベッドはあった。
誰が使うのだろう?気付くとここへ連れてきてくれた人は既に立ち去り、誰も居ない空間に一人置かれていた。拘束される訳でもない。生贄というものがなんなのか未だにわからない。
ソファに座るとドアがノックされた。
「僕だ、入るよ」
「はい」
王の声が聞こえ蔵之介は立ち上がり返事をすると、ドアが開いた。
王が部屋に入ってきて、後に二人続いて入ってきた。
ビアンカは蔵之介を見てほほ笑む。
「この部屋はくつろげそうかい?」
「はい、いろいろ揃っていて驚きました。」
ビアンカは頷いた。
「即位式で聞いていたと思うが、僕の名前はビアンカ、白の王になるものとして名をつけられた。先ほどの戦いで勝利し、その期待通り王となった。そして君を、蔵之介を生贄として手に入れた。細かい説明やここでの生活のことについては彼が説明してくれる、君の世話役だ」
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