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16話
ビアンカはそういって、後ろに居た小柄な少年を示す。
少年の髪も白いが、王とは違い袖は短く衣はシンプルな装いだ。少年は手を体の前で重ね、一礼した。ここに来てよく見かける礼の仕方だった。
「即位式、お疲れ様でした。私は、ゼノス。あなたの世話役として務めさせていただきます。以前からビアンカ王に、蔵之介様の世話役として任命され人間の世界のことについても調べております。
こちらの生活で分からないことがあればお気軽におっしゃってください。また、最初のうちは危険な為、一人での行動はお慎みいただきます様お願い申し上げます」
少年は深々と頭を下げる。見た目のわりにすごく丁寧な口調だった。
「そしてこちらの彼は僕の世話役だ」
ビアンカはもう一人を示した。そちらは背が高く、装いは白をベースにカラフルだった。髪は黒く、所々に青と赤のカラーのメッシュが入っている。
ビアンカに比べ少し派手なイメージがある。
「皆にはピーって呼ばれています。よろしくお願いします」
丁寧な言葉遣いだが性格も明るそうだった。ビアンカとは性格が真逆に思えた。
「よろしくお願いします」
蔵之介が言うと、ゼノスとピーは困ったように顔を見合わせた。ビアンカはそれを見て蔵之介に向きほほ笑み言う。
「蔵之介だったな。君はここでの立場は僕と同等、もしくはそれ上だ。ここでは君は第一に守られる。だから下の者にその様な低調なふるまいをしてはいけない」
ビアンカはそういって、ピーの胸ぐらを掴んだ。
「低調?」
蔵之介が聞くのをよそに、ビアンカはピーの衣を引き前かがみにさせた。
「ああ、このように扱っても」
とビアンカはピーの胸ぐらを引き首に噛みついた。
「えええっ!?!?」
蔵之介は思わず声を上げる。ビアンカが離れると、ピーは首筋を抑えていた。
「抵抗することはない」
ビアンカはそういって毅然とした態度を取る
「え、それって、痛くないの?それに毒とか……」
ビアンカの蜘蛛の種類は分からないが、戦いで見る限り相手は毒でやられたように見えた。
「毒は入れてない。だろ、ピー?」
「はい、痛みはありますが問題ありません。でも、戯れがすぎます」
そういってピーはため息をつく。
「ごめんごめん」
そしてビアンカは噛んだ跡に手を触れ、糸をかぶせた。先ほど蔵之介も頬に糸を張られたが、傷口に糸を張るのはここでは手当の様だ。思わず蔵之介は頬を撫でると糸がざらついていた。
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