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17話 スペルマウェブ

「今のは戯れだ。それに抵抗はしない。故にむやみに体罰を加えることはない。しかし、お互いの立場を守る為、毅然の態度を心がけなければならない。周りから見ればそれは不愉快だったり、敵視に値することもある。または容易に触れられる相手と判断され、襲われる。身を守るための行為だと思って欲しい。 実際の所、僕たちは幼馴染でもっと砕けた口調で会話できる仲だけど世を上手くわたるには必要な技術だ」 世の中を上手く渡る。人間の世界でも当てはまる話だ。家族でもちゃんとしてないと売られてしまう世界だ。 お腹のあたりで一度手をぎゅっと掴み、蔵之介は肩を落とした。 「どうかしたか?」 ビアンカが聞くと蔵之介は慌てて顔を上げる。 「あ、いえ、えっと、気を付けるってどうしたらいいんでしょうか?」 蔵之介はごまかす様に、手をわたわたと動かし聞く。 「そうだな、ならゼノスに命令してみろ」 命令? ゼノスはその言葉に反応し姿勢を正し、蔵之介を見ていた。 「えっと、じゃあ」 と蔵之介は部屋を見渡す。すると壁にクモの糸のようなものがついていた。 「あの壁に着いた糸を片付けて、くれないかな?」 「くれないかなは不要だ」 ビアンカは言って、蔵之介の指さす先を見た。 三人共に、その糸を見て驚く声を上げた。 「あれはっ」 ピーが駆け出し、確認する。 「え?」 蔵之介が驚いていると、ビアンカは声を荒げる。 「なぜそんなものがここにあるんだ!?ピー、今すぐ昨日この部屋を使ったものを割り出せ」 「はい」 ピーはすぐに部屋を出ていった。ゼノスは掃除用具を持ち出し、蜘蛛の糸を片付け始めた。 「え、なに?」 蔵之介が唖然としていると、ビアンカは肩を抱いてベッドへと歩ませた。 ベッドは天井がありカーテンが垂れている。洋風の様だが仕様は和風だった。 そのカーテンで先ほどの蜘蛛の糸が見えない様さえぎられた。まるで子供が見てはいけないものの様に。 「君は知らなくていい事だ」 蔵之介はベッドに座らされ、先ほどの糸を思い返す。 「あ、あれって」 蔵之介は顔を上げ、目の前のビアンカを見た。見たことはある、けどあっているのかは分からない。 「知っているのか?」 蔵之介は困ったような顔をした。そして頷き、首を横に振る。 「はい。……あ、いえ、その……」 「その様子なら知っているようだな。」 ビアンカは苦笑する。 「はい。スペルマウェブですよね。蜘蛛の雄が、精液を張った糸に出して、触肢の移精針に移す」 動画で見たことがあった。蜘蛛の雄は触肢の移精針に精子を移し、雌に針を刺し交接する。

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