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23話
「カースマルツゥです、これは人間が食べてると聞いて作って頂いたのですが……」
ゼノスが蔵之介の反応を見て、間違ったものを作っ締まったと察したのだろう。困ったように言った。
「食べたことも、見たことも、聞いたこともないよ!?こんなものぜっったい無理!」
「す、すみません……」
ゼノスは冷や汗を流し、慌ててお皿を避けた。
「ではこちらはどうでしょう?チャカチャンをつかった炒めものです」
ゼノスがめげずに勧める。
「チャカチャンも聞いたことないよ……」
蔵之介はその炒め物を見て、眉を寄せた。目がぴょこんとついていて、夏によく木に止まっているあいつに似ている。
「これって、セミじゃない?」
「はい、別名はセミだったと思います。旬は過ぎましたが美味しいですよ」
ゼノスは嬉しそうにほほ笑んだ。
知ってるからと言って食べられるものでは無い。蔵之介にとってそれを食べるのにはかなりの勇気がいる。
意を決し、一口と試みるが手が止まる。目の前にセミの顔があり、目をそらし他の物を指さす。
「こっちは何?」
「ミールワームのフライです」
細長い幼虫のような見た目だが衣がカリカリに上げられている。
「こっちは?」
「イナゴの佃煮です。人間が作ってるものと同じ味になってるか分かりませんが」
見た目はさながら匂いは食欲をそそる。
そしてあまり聞きたくはない触覚のはみ出した赤茶色い何かのフライを指さす。
「じゃあこっちは?」
「それは……、聞かない方が良いと思います」
ゼノスがそういって察しがついた。ゼノスも人間の世界では忌み嫌われている事を知っているのだろう。
ビアンカはそれを食べようとしたが蔵之介とゼノスの様子を見て、食べるのは止めた。
食事を終え、蔵之介は部屋に戻った。とは言っても最終的にどれも口にすることは出来なかった。
「お腹すいたー!」
蔵之介はベッドに仰向けになり、寝転んだ。
「虫なんて食べられるわけないだろ……」
蔵之介はため息をつく、なんで人が来るって分かってて、部屋も風呂もトイレも人間用に近いのに食事だけ蜘蛛仕様なんだ!?自分で言うのもなんだけど、あまり文句を言わない人間だけど、空腹だけは耐えられない。
お腹をさすりながら、部屋を見渡すが食べられるものはない。
ゼノスもビアンカに呼ばれ蔵之介は部屋に一人残された。
部屋の外で監視が何人かいるらしく、部屋に居れば安全だと言われた。
けどこの空腹。外に食べ物を探しに行きたい。
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