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26話 洗われる手
ビアンカの顔が間近で唇の動きから柔らかさが見て取れる。蔵之介は急に体が熱くなるのを感じて手元に目を戻した。
先ほどからビアンカの手のひらに包まれ右手は丹念に洗われている。
手のひらと手の甲から指先に移動し、指を一本一本ビアンカの指に包まれ丁寧に揉むようにマッサージされる。
次第に指が絡みだし、指の間にビアンカの指が絡んでくる。指が滑り込み、徐々に奥へと入り込んでくる。第二間接の内側が自分でも想像できなかった位敏感で、ビアンカの指とこすれ合いぞくぞくと体が震えた。
「んっ」
慣れない感覚に思わず声が漏れた。
「痛いか?」
「い、痛くない。大丈夫」
蔵之介は堪えるように下唇を軽くかんだ。
手のひら側からの洗浄が終わると手の甲側から指を絡められ再び指の間を、幾度もこすられ柔肌に触れられると胸の内側から、体が熱くなった。
右手を終えると、今度は左手をビアンカは洗いだした。
ビアンカは目の前の鏡を見ると、蔵之介の顔が真っ赤になっているのに気付き細くほほ笑んだ。蔵之介の左手も同じように、手のひらと手の甲、指の先、指の間まで洗い、暖かい水で洗い流された。熱くなった体は敏感で何をされても、ビアンカの肌を感じてしまい、蔵之介は声が漏れそうになるのをひたすら堪えていた。
洗い流している間も、こすられたり手のひらをもまれたり、ビアンカは丹念に蔵之介の手を洗い流していた。
洗い流し終わると、タオルで両手とも優しく当てるように拭かれた。水分を取り終わると、ビアンカは蔵之介の手を確認して洗面台に置かれたボトルを取り出した。
「荒れないようローションを塗ろう」
ボトルから液を手のひらに取り出し、ビアンカは両手に塗り伸ばして蔵之介の手のひらを再び包むようにして液体を塗り始めた。
ぬるりとした感覚にそれまで何も言えずに、されるがままだった蔵之介はこらえきれず口を開いた。
「ビアンカ、自分でやるよ」
「僕に触れられるのが嫌なのか?」
そう聞かれると、ドキッとして胸が痛むのを感じた。
「嫌じゃ……ない」
本当の気持ちだけど、言ってから恥かしさに襲われる。手を洗われローションを塗られるなんてされたことがない。もしあるとしても子供の頃だ。
「なら任せて」
耳元でビアンカの声が響いた。蔵之介はこれ以上言うと、さらなる刺激を与えられそうで黙ってビアンカの手のひらを受け入れた。
背中は先ほどからビアンカの胸に触れ、体も熱くなり汗ばんでいる。こんなに暑いのにビアンカも離れようとはしなかった。ローションのぬめりは消えることなくビアンカの手に両手をマッサージされていく。ぬるぬると触れ合う手をくらくらした頭で感じていると、今まで熱くなった事のないそこにうずく様な痛みを与えた。
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