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31話 バードイートの酒場へ
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ピーはバードイートが集まる酒場に向かった。
今のバードイートのリーダーは気性が荒い。100年前は温厚でまわりの蜘蛛たちとも上手くやっていた。
変わったのは先代の長がなくなってからだ。跡継ぎは戦いで決められた。もちろん温厚な者たちは早々に破れ、当時邪件にされていた横暴で野蛮な者たちが戦いに勝利した。その手下達の多くもそれと同じく気性が荒く、交渉するには手間取るのは目に見えている。
酒場に入ると何人かが振り返り、ピーの姿を見て厭らしくクツクツと笑った。そこに集まる者たちの大半は背も高く、体のサイズは倍近くある。決して臆してはいけない。ピーは心を強く保ち前へ進んだ。
それに気づき奥にいた一人が大きく笑い声を上げる。
「よく来れたな、ビアンカの奴隷が」
色黒の巨体が笑いながら膝をたたいた。
「奴隷ではありません。鳥を狩れる方を探しています」
「鳥?何に使うんだ?」
「人間が食す為の物です、人間が食べれる鶏が欲しいんです。譲っていただきたい」
すると周りから笑い声が起きた。
「何だぁ?王様が自分で面倒見れないのに、俺たちの長を倒してぇ。その上で人間の面倒見ろと頼んでくるたぁ、ずいぶんお偉いこったなぁ。けけけ、俺たちに勝利を渡しとけば人間も食うには困らなかっただろうに。今、長は安静の為にお眠りだ」
大きな手がピーの顎をつまみ引く。
ピーは毅然とした態度で相手を見やる。すると男はフンと鼻で笑った。
「つまらない男だ。いいだろう、鶏を狩って来てやる。ただし、人間との交接が条件だ。それも王がやる前に」
男はにやにやと笑う。ピーは眉を寄せ睨む。
「それはできません。王が許しません。狩のお金ならいくらでもお支払いします」
「そんなのは当たり前だ。それ以外の条件にきまってんだろ。もちろんバードイート全員まとめて相手になってもらう」
そういうと周りからクツクツと厭らしい笑いが起こる。盛り上がるものや、指笛を鳴らし酒をふりまくものまでいる。
ピーは苦虫を噛むように歯を食いしばる。
「外道め、そんな事をしたら死んでしまう」
睨むピーを見ながら鼻で笑う。
「そんな事言ってられるのも今のうちだ。空腹で人間が死んだら一大事だぞ?」
ピーは顎を離され、避けるように後退った。
「俺たちとやって生き残る可能性にかけるか、黙って死を待つかどっちかだな」
ピーはため息をつく。
「では、お金だけでの解決は不可能という事か?」
「当たり前だ」
ピーは少し黙り、目を細めた。
「代りの者では?」
ピーの額に汗が浮かぶ。
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