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32話

「お前が人間の代りになるとでも思ってんのか?何のために戦って勝ち取ると思ってんだ」 巨体の顔がピーの耳元でささやく。 「まー、お前がどうしてもってんなら誰かが相手してくれるだろうけどな」 そういって巨体が笑うと 「愛してやるぜー!」 「いつでも来いよ!!今でも相手になってやるぜ」 と周りの者達も沸いた。一人が立ち上がり、ピーに歩み寄る。 ピーは大きく息を吐き、さらに後退る。 「今回の事は王に報告し相談させていただく。失礼」 ピーはその場を立ち去り歩き出す。吐き気を催すが、必死にこらえた。 「踊れよピー」 後ろから聞こえるのを無視して歩くが、突然固い手がピーのお尻に触れ、鷲掴みにされた。 「色っぽい足見せろよー」 耳元でささやかれねちゃりと唾液の音が鳴る。 尻を捕まれた手を振り払い、酒場を後にした。 少し離れたところでピーは、こらえきれず胃の中の物を吐き出した。 覚悟はしていた。もっと酷いことも想定していた。 「尻を触られるくらい何だっていうんだ」 ピーはふらつきながら歩き出した。 蔵之介はベッドで寝息を立てていた。 ゼノスもそろそろ寝ようかと支度をしていたら、ドアがノックされた。 「僕だ」 声を聞いてゼノスはすぐにドアを開けた。 「ビアンカ様」 「蔵之介は寝たか?」 「はい、ビアンカ様達が出て行ったあと、しばらく泣いて居ました。そのまま泣き疲れて寝てしまわれました。」 ビアンカは頷き自分のしたことを受け止めた。 「入れてくれるか?」 「はい」 ゼノスは下がり、ドアを開けた。 ビアンカは部屋の中へ進み、屏風の奥のベッドへ向かう。 カーテンをめくり覗くと蔵之介は目を腫れさせ寝ていた。 その目を親指でそっとなぞる。 「可愛いな、昔と変わらない」 ビアンカはベッドから離れ、ゼノスの元へ向かった。 「ゼノス、調べてきたがやはりここには人間の食べられるものはなさそうだ。人間の世界に行ってなんとかなりそうなのは、野草や果物かもしれないがゼノスは何か心当たりはあるか?」 「そうですね、野草なら見つけられればすぐに手に入るかもしれません。果物も野生の木になるものでしたら取ってこれるとは思いますが……。今の季節ではほとんどが人間の育てる果実で野生のものは少ないかと。あ、でもキノコ類ならなんとかなるかもしれません」 「キノコ?見たことはあるがあれが食べられるのか?」 「はい、種類によっては毒があるので食すのには分別しなければなりません」 ビアンカは考え顎を指で軽くなでる。

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