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33話

「毒があるのは危険か。知識のない我々が取りに行って蔵之介に毒を当ててしまっては意味がない」 「あとは、たけのこが。運が良ければ手に入るかもしれません。しかし取れる時間や時期には限りがあるので、これにも確信は持てませんが」 「分からない物ばかりだな。ゼノスに任せてかまわないか?夜は僕が蔵之介の傍にいる。朝までに、採取を頼みたい」 ビアンカが言うと、ゼノスは頷いた。 「分かりました。心当たりを探してみます。取れるのは早朝が多いので、よろしければ今からでも調べに行きたいのですが、大丈夫でしょうか?」 ゼノスも蔵之介の食事に関しては気にかけていた様で、できる事なら今すぐにでも向かいたいといった様子だった。 「かまわない、頼む」 「はい」 ゼノスはビアンカに一度頭を下げ部屋を出ていった。 ビアンカはゼノスが出ていくと、ドアに糸を張った。 これで侵入者は拒める。 蔵之介の誘拐を試みた者たちに、スペルマウェブを張ったものは居なかった。まだ、それをした者の正体は分かっていない。 ビアンカは蔵之介のいるベッドに戻り上着を脱いだ。もう一枚羽織を脱ぎ、クローゼットにしまった。 ベッドのカーテンをそっと開く。中では変わらず蔵之介が寝息を立てている。 ビアンカはベッドに入り、蔵之介の顎をそっと指でなぞった。 その手は首筋、肩、腕、腰へと形を確認するように滑っていく。 ビアンカは蔵之介の首元に顔を近付け大きく深呼吸した。 蔵之介は吐き出される息がくすぐったかったのか、それを避けるように身を縮こまらせた。 「蔵之介、先ほどはすまなかった」 ビアンカは蔵之介の入る布団に入り込み、蔵之介を抱き寄せた。 「どうやら君を前にすると押さえが効かないようだ。もっと君を感じたい」 静かに寝息を立てる蔵之介は、ビアンカのぬくもりに引き寄せられるように寄り添い、抱きついた。ビアンカはそれに胸が暖かくなるのを感じ、そっと蔵之介の頭を撫でた。 「こんなに満たされる気持ちはいつぶりだろうか」 ビアンカは蔵之介を抱きしめながら眠りについた。 朝、蔵之介が目を覚ますとそこは見慣れない場所。ベッドの天井が目の前にあり、ベッドのカーテンが、頭側半分閉められている。人間の世界でいればこんな豪華なベッドで寝ることはなかっただろう。 足の方から明かりが広がり、まぶしくて一度瞼を閉じ深く呼吸をする。 そうだ、生贄になったんだ。森の中を歩いて、蜘蛛の糸に捕まって、戦いが始まって。 その戦いで勝ったビアンカって人が王様になって。

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