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34話
昨日だけでいろいろありすぎて思い返すのが嫌になった。
お腹がぐぅぅと鳴りお腹をさする。そういえば何も食べていない。
蔵之介は考え伸びをしようと手を上に上げようとすると、右腕が何かに触れる。
隣を見るとビアンカが蔵之介の方を向き寝ていた。
ギョッと目を見開き見つめていると、ビアンカが目をゆっくりと開けた。
蔵之介を見ると、ビアンカはにこりとほほ笑む。
「おはよう、蔵之介」
ビアンカは蔵之介に顔を寄せ、唇を重ねた。柔らかく触れる唇。
「んん」
なんどか優しく啄まれ、唇を甘噛みされる。
「ひはいっ(痛いっ)」
蔵之介が言うとビアンカは口を離す。
「ごめんごめん、昨晩寝顔を見ていたからつい」
ビアンカは肘をついて手を枕にした。
昨日の夜?思い返すとどうやって寝たのか覚えていない。食事が出来ず、部屋に戻り……。昨日の食事……。そのことを思い出すと思わず眉間にしわを寄せた。
しかしそれを忘れるように頭を左右に振った。
「あの、でも、なんで寝顔なんて……それに一緒に、……寝たんですか?」
昨日の夜、ビアンカを怒らせてしまった。てっきりしばらく口も聞いてもらえないんじゃないかと思っていた。両親も今までの友達もそうだった。
「見ていたかったんだよ、一晩中でも。でも今後毎日でもみれるんだ。それに初夜だからね。不安も多いだろ、君を一人にさせたくはなかった。」
ビアンカは蔵之介の左頬に右手の甲を当てそっとなでる。
「傷は痛まないか?」
ビアンカは左頬に張られた糸を何度か撫でた。昨日の戦いで最初につけられた傷だった。
「大丈夫、痛みもないし」
「ならよかった。もう少しつけておくといい。夜には完治してると思うよ」
蔵之介は頬に触れた手に胸を高鳴らせた。ドキドキと鼓動を胸に手を当てると糸のざらつきを感じ、ドキリとした。
「どうした?」
ビアンカが聞くが、蔵之介の顔に影が落ちる。
「いえ」
―また糸がある
「心音がまた乱れているな。苦しいのか?今回は糸を少なめにしたんだけど、まだ強いのかな?」
―この気持ちは糸のせいなのだろうか?
「ちっ違うんです。ただ、僕のドキドキはこの糸があるからなのかなて思って」
蔵之介が撫でる胸元の手にビアンカは手を添えた。
「この糸は確かに蔵之介の心音を速めることがある。けど、それはケガをした時や病気をした時に治癒力を高めるためだ。その要因がないならこの糸は効果を成さない。その心音は蔵之介の感情から来ているものだよ」
ビアンカが言うと、蔵之介は驚き顔を赤くした。
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