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35話

ドキドキしたり、嬉しかったり、この気持ちは糸のせいじゃない? だとすると、僕はビアンカに感じてる感情からくるもので……。 ビアンカ王と居るときに感じるこの感覚は…… 蔵之介の胸はズキっと痛んだ。 今まで、友達にも、母親にも認められなかった。 好かれることも無かった。 僕は、ビアンカを好きになっていいのだろうか? 好きになってもらえるのだろうか? 蔵之介の心音の乱れをビアンカは察し、身を起こした。 「蔵之介、お腹がすいてるのか?すまない、すぐに何か準備させる」 ビアンカは蔵之介の異変を空腹と勘違いしていた。しかし、今の蔵之介にはそれが好都合だった。あまり今の気持ちに突っ込まれると返答に困ってしまう。ビアンカが起き上がるとピーが上着を持って待っていた。 「鶏はどうなった?」 「それが……」 ピーがそれだけ言って視線を落とした。 ビアンカが、ピーの後ろに立っていたゼノスに視線を移すが、ゼノスも首を横に振った。 「部屋で話を聞こう。ゼノスは蔵之介のことを頼む」 王は上着を着て部屋を出ていった。 蔵之介は身を起こした。するとゼノスが、ベッドのカーテンを少し開ける。 「お体の方は大丈夫ですか?昨日何も食べていらっしゃらなかったですが、お腹はすいていませんか?」 ゼノスが心配そうに言う。 「大丈夫。すこしお腹すいてる気がするけど」 胸の方が苦しくて、お腹が気にならなかった。 「鶏って何?ビアンカが言ってたけど」 「人間が食べれるものがどこかにないかと話し合い、鶏肉なら食べれるのではないかと仕入れられる場所を探しに行っておりました。私も昨晩から野草や、人間が食べられそうな物を調べて探してみたのですが、見つけられませんでした」 「そっか」 鶏肉というと、唐揚げ、チキン、焼き鳥、そぼろ…… 考え出すと匂いまで浮かんでお腹が鳴った。 「ご、ごめん、鶏肉のこと考えてたらお腹すいてきちゃった」 恥ずかしさを笑いながらごまかし、蔵之介はお腹をさすった。 家であれこれ言われていたけど、食事を与えられないということはなかった。食事が出来ず、虐待される家よりはましなんだと言い聞かせて生きてきた。 けど、食事を与えられなくても気遣ってもらえる今の方が幸せだと感じてしまう。 自然と蔵之介の目から涙がこぼれ、膝を抱え泣いた。きっと彼らは僕を見放したりはしない。ここで飢えて死ぬ方が幸せかもしれない。 「蔵之介様、大丈夫ですか?」 ゼノスは蔵之介の背中に手を添える。 「もしかして、帰りたいですか?」 ゼノスの手から少し震えが感じられた。そんな事はない、帰りたいなって考えてもなかった。

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