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37話
ゼノスが言って、蔵之介は考えていた。
「なんで俺はそんなに守られてるの?さっきの話だと生贄の俺はここにいる蜘蛛と交わる為に生贄にされたって事?」
そう問われ、ゼノスは口をつぐんだ。驚いた顔をして青ざめていく。
「あ、あの、それは……っ」
ゼノスのあからさまな態度に、察しがつく。
「もしかして僕が聞いちゃいけない事?」
「違っ、でも、そう、です」
ゼノスは諦めたようにそう言った。
「生贄は、王と交わる為に存在します。王が許せば他の者とも交わります。しかし、蔵之介様はまだ性成熟しておりません。なので王にはまだ黙っていて欲しいと言われてて……」
ゼノスは泣きそうな顔で言った。
やはり生贄には役割があった。しかしあまり驚きはしなかった、よく見るパターンの一つとして想定はしていた。
ビアンカが話さないってことは、きっとすぐにそれをするというわけではないのだろう。生贄の身体の事もいたわってくれているみたいだし。ビアンカの今までの気遣いを考えると、疑う気持ちは無かった。
そしてスペルマウェブに対し過剰に反応している所からも、俺は守られている。
「そっか、じゃあビアンカには言わないでおくよ。ゼノスも気にしないで言わなかった事にしておいてよ」
性成熟はしてないにせよ、教育も受けてるし知識はある。蜘蛛の獣と交わるというのはどういうものなのかはっきり分からないけど。
「し、しかし。私は蔵之介様に話した事や起きたことを王にお伝えしなければなりません。なので黙っておくことはできないんです」
「黙ってたらどうなるの?」
「死罪かもしれません……」
ゼノスは目から涙をぽろぽろ流した。
「そ、そんなことで死罪とか重すぎでしょ!?ゼノスは優しくしてくれるし、そんなことになったら俺が止めるから!」
蔵之介はゼノスの手を掴んだ。
「蔵之介様……」
ゼノスは涙をぬぐった。
「じゃ、じゃあ命令。今話したことはビアンカには言わないで」
「め、命令ですか……」
ゼノスは戸惑ったように言った。
「ほら、僕ってビアンカと同じ地位なんでしょ?そう、そしたらビアンカに報告しなくても大丈夫かなって思ったのだけど……だめかな?」
ゼノスは少し考えて顔を上げた。
「私は蔵之介様の世話役です。ビアンカ様に逆らう事がっても蔵之介様に従います。蔵之介様の味方でいることが私の役割です」
考え方がちょっと重い……、と同時になんて従順な子なのだろう?と蔵之介は思た。しかし、これはここでのルールなのだろう。
蔵之介はゼノスの頭を撫でた。
「じゃあこのことは二人だけの秘密ね」
「はい」
ゼノスはホッとしたような表情で笑った。
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