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38話
その後はゼノスにこの世界の文字や、文化、過ごし方を教えて貰い過ごした。
人間の世界と同じように書物というものが存在してる。
PCやスマホはないけど、ビアンカの許可があれば所持を許されるかもしれないとの事だったが、外の世界にもう興味は無かった。ここでのやさしさに触れたら、人間の世界の事なんで思い出したくもない。しかし。
「お腹すいた……」
夕食の時間になったが、蔵之介は食事の席には行かず部屋で過ごした。
食べられる天かすをサクサクと食べるが、やはり満腹感を味わえなかった。
「少しでも食べてみませんか?調べるとミールワームは人間にも食べやすいとあります。食べやすいようにすりつぶして虫の形は無くしてみました。栄養価が高いので一口だけでも」
ベッドで寝転ぶ蔵之介にゼノスがミールワームのフライを持ってきた。
蔵之介はそれに目を向けるが、食べる気にはなれなかった。それに空腹で気分が悪い。
お腹はすいてる、けどあの見た目とか触感とかもろもろ考えると口にするのはできなかった。
でもお腹はすいたし、このままだとゼノスにもビアンカにも心配をさせたままになってしまう。
心の葛藤があり起き上がった。
「一つだけ、食べてみる……」
蔵之介が言うとゼノスは嬉しそうにお皿を差し出した。
蔵之介は一つ手にとるとしばらく見つめた。
昨晩見た物とは違い、丸く平べったい小さなコロッケのような形をしていた。これなら分まだ食べれそうではある。虫の姿を思い出さなければ。
生唾を飲み込み口に運ぼうとした。
するとドアがノックされる。
何かとドアの方を見ると何の声もかからない。
「誰でしょう?」
ゼノスはベッドの棚にお皿を置いた。声のかからないドアに警戒し、ゼノスはドアの周りに蜘蛛の網を張る。
蔵之介も何かと屏風の陰に隠れ見守った。。
「誰ですか」
聞いても返事はない。ゼノスはゆっくりドアを開けた。
「はなせっ!」
聞いたことのない声が聞こえた。
「もう出て問題ない。しかし、蔵之介様は中に」
という声が聞こえ、ゼノスはあたりを見回した。そこにはキーパーが何者かを押さえ、立っている。
「キーパー。そいつは?」
「蔵之介様の部屋の前に何かを置いて行こうとした。そのまま逃げ出そうとしたから捉えた。王を呼んでくれ」
ドアの前には、白い物が置かれている。中に何かが入っている様だ。
「蔵之介様。中でお待ちください」
ゼノスは声をかけるとドアを閉めた。
いったい何が?でも、今何か美味しそうな匂いがした。
空腹に耐え切れず、持っていたミールワームはお皿に戻した。
張られていたゼノスの蜘蛛の糸を取り払って、ドアを開ける。
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