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39話 運ばれてきた食事

それに気付いたキーパーが声を上げる。 「蔵之介様。出て来てはいけません!」 その声は聞こえるが、蔵之介は強烈な食べ物の匂いに誘惑され足元を見た。 そこにはビニール袋が置かれている。中を見ると、焼き鳥の惣菜、そして弁当が入っている。 なんでこんなものがここに?と思いながらも、よだれが止まらず、ごくりとのどを鳴らす。丸一日何も食べていないに等しい。 膝を付き惣菜のパックを開けた。タレがたっぷりかかり、串にまでタレがしみ込んだ焼き鳥を取り一口。 口に広がる甘じょっぱいタレ。かみしめると炭火焼の香ばしい香り。一日ぶりに食べる食事、最高に 「美味しいー……!!!」 初めて美味しさで涙が出た。 夢中で食べる蔵之介にキーパーは驚いて手を緩める。その隙きに囚われていた男はすり抜け逃げ出した。 「あっ、待て!」 キーパーは慌てて後を追う。 それと同時に王達がやってきた。 不審者を捉えていたキーパーはおらず、焼き鳥を美味しそうに食べる蔵之介が部屋の前に残されている。その状況が理解しきれず、ピーとゼノス含めた三人はしばらく立ち尽くし蔵之介を見ていた。 「あー、満腹」 蔵之介は幸せそうにソファに横になった。 ビアンカ、ピー、ゼノスはそれを立ったまま見ていた。キーパーだけが膝をつき首を垂れていた。 「これが人間の食べ物ですか?」 ゼノスが残ったプラスチックケースを見て聞いた。気になるのか匂いもかいでいる。 「そー、スーパーの弁当だね。少し冷めてたけど、今なら冷めててもなんでもおいしいやー」 蔵之介は満足げに言った。 ビアンカも蔵之介の姿を見て安心したが、キーパーが取り逃がした不審者が気がかりだった。いったい何者なのか。 蔵之介が食べれるものを持ってきてくれたのはありがたいが、昨日の件もあり城にこんなにも簡単に忍び込まれるというのも問題だ。 スペルマウェブの件もあり、警戒を強めているのにこれだ。 ふがいないと思いながらも、全ての言葉を言い訳の様に感じビアンカは口には出さず飲み込んだ。 ビアンカはキーパーに目を向ける。 「キーパー、相手はどんな男だったんだ?」 キーパーは膝をつき頭を下げている。取り逃がしたことを先ほどから悔やんでいた。 「髪や服も青黒くベルベットのようなツヤ感がありました。多分コバルトブルーかと」 「コバルトブルー?」 蔵之介はそれを聞いて起き上がった。 「そいつ何か言ってた?」 「いえ、多分逃げるのに必死で。一目散に城外へ逃げていきました。あの速さで侵入されたのなら気付けないのも仕方がないかと。隙ができるのは荷物を置いた瞬間のみです。かなり抵抗もされました」 ビアンカは話を聞き頷いた。

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