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40話

「蔵之介はコバルトブルーに心当たりがあるのか?」 蔵之介の反応に疑問を覚えビアンカは問う。 「あるけど、あれはただの蜘蛛だったし。ここにいる獣とは違うと思う」 「獣?」 ビアンカはソファに歩み寄り蔵之介の隣に座った。 「えーっと、外ではそう呼んでるみたい。こんな姿の蜘蛛みんな見たことないし。蜘蛛の獣って聞いて来たんだ」 考えると、自分たちが獣と呼ばれてるなんて知る由もないのだろう。それにそんな呼ばれ方してるなんて聞いて気分いいわけがない。しかし、ビアンカは特に気にした様子はなかった。 「そうか、確かに人間の前に姿を現すことは少ない。姿を現すにしてもできるだけ人間の容姿の似たものや、蜘蛛や他の物擬態できるものが向かうことになっている」 ビアンカはキーパーを見る。それに気づき蔵之介もキーパーに目を向けると、キーパーは静かに消えた。 「えっ、どこ行ったの?」 蔵之介は驚いてあたりを見回す。 「そこにいるよ。彼は周りの色に合わせて体の色を変えられるんだ。だから普段見えない。けど、基本僕たちの近くにいる。城には彼だけではなく他にも同じように姿を消し守るものが何人もいる、蔵之介を見守るよう頼んでいるキーパーの指揮官は彼だ。今後も顔を合わせることもあるだろうから覚えておいてくれ」 「うん」 蔵之介は頷いた。 それを見てビアンカは蔵之介の頭を撫でた。 「なに?」 蔵之介を撫でる手に合わせて、頭がゆらゆら揺れる。 「お腹がいっぱいになったら素直になったな。心音も安定している」 それを聞くと蔵之介はドキッとする。 「どうした?」 「その、心音の話はあまりしないで欲しいんだ。ドキドキしちゃうから」 蔵之介はうつむき気味にビアンカを上目づかいで見た。ビアンカは数秒それを見つめてから 「そうか、ならやめておくよ」 とだけいって、蔵之介の顎を優しく引きキスをした。 蔵之介もそれを受け入れ数秒唇をかわした。ビアンカの唇が離れると、ビアンカは自分の口元を指で撫でた。 「奇妙な味がするな。でも、確かに美味しい」 「う、うん」 キスを美味しいと言われてるみたいで恥かしくなって顔が熱くなった。 蔵之介は苦笑すると、ビアンカに肩を抱き寄せられる。 ドキドキするが、ビアンカの腕の中は安心できて心地よい。今までこんな心地よさを味わった記憶がない。家にいても外にいても文句を言われいじめられ、安らぐ暇はなかった。 どこか緊張続きな日々に蔵之介の心は疲弊していたが、それがほぐれ解かされていくように感じていた。

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