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43話
蔵之介が言うと、ピーも諦めビアンカを解放した。ビアンカは瞳を輝かせ嬉しそうに蔵之介に歩み寄る。子供の様で蔵之介は思わずほほ笑み返した。するとビアンカはすこし驚いて目をそらした。自分の子供っぽい行動を自覚したのだろう、頬を赤くし恥ずかしさを誤魔化す様に咳ばらいをした。
ピーはそれを見て、やれやれと言った様子で肩をすくめた。
蔵之介はハンバーグをフォークに刺し、ビアンカにひと切れ差し出す。
ビアンカはそれを食べ、味わい飲み込んだ。
「これはうまい!初めて食べる味だ。昨晩蔵之介の口越しに味わったものともまた違う美味しさだ」
蔵之介はそれを聞くと顔を赤くした。
「口越しにって……」
そんなことを言われたら昨日のキスを思い出して体が熱くなる。ビアンカたちはキスに羞恥心という物がないのだろうか?ナチュラルにしたいときにしてくるようだったし、話してても自然と会話の中にその話が入ってきたりする。
俺が気にしすぎなのかな?
ビアンカはもっと欲しいとねだり始めたが、今日の蔵之介の三食分しか届いていない。「これがなくなると蔵之介は一食抜くことになります。」そうピーに言いきかされ、ビアンカは泣く泣く諦めた。
ビアンカは普段冷静そうに見えるが、欲しいものには執着が強い様だった。
そして、食事を終えると
「コバルトブルーを捕まえて、僕の前に連れてこい」
キーパーにそう指示を出していた。
普段の姿からは想像しずらいビアンカの言動に蔵之介は少し笑ってしまった。もっと大人な行動をとれる人かと思っていた。今のビアンカは子供っぽく親近感があった。またビアンカに少し近づけた気がしてほっとしていた。
安らぐ胸の内だが、それがまた、蔵之介の心を迷わせた。
俺はビアンカとこんなに近付いて大丈夫なのだろうか。優しくされて嬉しくて、どんどん心が惹かれていく……。
その日夜、皆が寝静まった後の事。
青い髪が風を切、城の中へと入っていった。
昨夜と同じルート。
蔵之介の部屋の前にコンビニの袋を置くと、あまりにもあっさり侵入できる事に違和感を覚え、あたりを警戒して見回した。何の気配もない。警戒されている様子もなかった。
城の中がこんなに警戒が薄いわけがない。ましてや連日来ているのに警戒していない方がおかしい。
「少しお時間よろしいでしょうか?」
急に声がして、コバルトブルーは驚きバックジャンプをした。しかしそこには扇状の網があり、すぐさま軸になっていた糸が切れ、コバルトブルーを包み捉えた。
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