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50話

 ビアンカは仕方ないと言った様子で息をつく。 「なら蔵之介は彼をどうしたい?追放するか?食事を運ばせるために雇うと言っても断られた。このまま、不法侵入を許し続けるわけにもいかない。  蔵之介にできる事は、彼を説得するしかない。出来なければ追放か、それでも入ってくるようなら拘束して留置するしかない」  ビアンカに言われ、蔵之介は泣きそうな顔をしていた。  蔵之介は海に向き直った。 「海、海ならビアンカと契約して食事を運んで。そしたらいつでも会えるし、俺は嬉しい。もしだめなら、もう来ないでいいよ。海が捕まるのは見たくない。全部俺のエゴだけど……。食事も頑張って虫を食べる」  海は蔵之介の言葉に目を見開く。  ビアンカは蔵之介の頭を撫でた。 「上出来だ」  蔵之介はビアンカに言われ、顔を向けるとビアンカはほほ笑んでいた。  ホッとして海を見るとうつむいている。 「卑怯な奴だな」  海は手を握り、ため息をついた。 「どうする?蔵之介が望んでるよ」 「ビアンカ。そんなふうに海を脅さないであげて」  蔵之介はビアンカの腕をつかんだ。海を見るが、返答をしてこない。これは拒絶なのだろう。蔵之介はそう受け取り、口を開いた。 「大丈夫、僕は虫を食べる。僕に捨てられたって思っても、僕を心配して食事を運んで来てくれたんだ。捕まって海が罰を受けるなんて嫌だし。  きっと森の中に離してからも苦労したのに、もっと苦労させるなんて嫌だよ」  蔵之介の目からは涙がこぼれ、ぽたぽたと絨毯に染みをつくった。  ビアンカは蔵之介を見つめ、その後海へ向き直り口を開く。 「分かった」  先に声を出したのは海の方だった。 「契約する」  海がそういうとビアンカはほほ笑んだ。 「助かる。今後は、二人分を頼む」  ビアンカの言葉に、海は首を横に振った。 「残念だが、それは無理だ。俺は蔵之介のためにしか働くつもりはない」  海が言うと、ビアンカは軽く笑った。 「それだけ蔵之介の事を想ってるってことか」  ビアンカの言葉に海は顔を赤くする 「そういう言い方するな!」  照れたように言う海を初々しいと言うかの様にほほ笑み見て肩に手をぽんぽんと置いた。 「じゃあ」  と蔵之介が口を挟む。 「材料を頼める?」  蔵之介は涙をぬぐい、海に歩み寄る。 「材料?」 「材料と調味料を揃えてくれれば僕が作れるから。出来れば料理の本とかもあると助かるけど」 「それならできると思うが。何を買って来て欲しいのか指示は欲しい」  海は蔵之介と目が合うと照れたように目をそらした。 「それはメモを作るよ。それで二人分作れると思うから、そしたらビアンカも食べれるよ」  ビアンカもそれで頷いた。

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