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51話

「それなら料理人に蔵之介から教えてもらい、いずれ料理人だけで作れるようにさせよう」  蔵之介を見つめる海の目は震えていた。 「ではそれで契約でいいかな?」  ビアンカはそういって、海の体をひとなめ見る。そして腕を掴み、手を滑らせる。 「おい、触んな!」 海が顔を赤くし抵抗するが、胸、足、お尻と触っていく。腰を撫でると海は「ひっ」と声を上げた。 「うん、がたいもいい、力もありそうだ。警戒の強い初日に侵入で来たスピードと判断力。それに事前調査もしてたんだろうな。その能力を期待してもう一つ契約したい」 「もうしねーよ!あんたとこれ以上契約なんてありえない!」 「蔵之介の専属のキーパーになって欲しい」 その言葉に海は驚き顔を上げる。 「キーパーは今もいるが、今後蔵之介と相性のいいキーパーを選び付き人にするつもりだった。それには蔵之介を絶対的に信用し、命にかけても守れる人材が必要だ。君がそれに適任だと思うんだが、どうだ?  ゼノスもその役割はあるが、まだジュブナイルだからな。君は性成熟してるだろ?」 「当たり前だ!じゃなかったらさっきのは何だっていうんだ!?」  海は怒って言う。  この世界で幼児はスリング、性成熟したものはアダルト、その間はジュブナイルに分類される。ゼノスはジュブナイル。生贄が子供だということも想定し世話役に任命した。そう蔵之介はゼノスから聞いていた。  ビアンカは続ける。 「ゼノスが世話役としてはここまでで適任だと分かったが、守護としてはゼノス一人では荷が重い。城を守るキーパーもいるが、いつでも守れるわけではない。  そして、生贄の役割の面も含め蔵之介に害がなく、信頼でき、できる限り側にいて守れる者が必要だ。  君は他のキーパーの様に姿を消すことはできないが、生贄としての役割を害するような事はなさそうだ。その面も合わせ、素早さや、城に忍び込める度胸、城のキーパーから逃げ出した実力。蔵之介の守護には適役だ」  ビアンカは海の耳元に顔を寄せる。 「食事を運ぶとき以外は、蔵之介を好きなだけ見ていられる、どうだ?」 「まるで俺がいつでも蔵之介を見ていたいみたいじゃねーか」  海は小声で言って蔵之介を見る。蔵之介は何かと、何度か瞬いた。 「悪い仕事じゃないだろ?それに、生贄をかけた戦いの時。僕が木の上に張り付けた蔵之介を、木から降ろしたのは君だろ?降ろしたのは蔵之介が高いところが苦手なのを知っていたからだ。違うか?」  ビアンカは含みある笑いを見せ、しかし離れると厭らしさを消し、自然とほほ笑む。

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