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52話
「なっ」
海は否定しなかった。
確かに木のから降ろしたのは海だった。
蔵之介は海を逃がすときに高いところに逃がそうとしてくれた。しかし、高いところが苦手な蔵之介は木に登ろうとするが足がすくみ怖くてなくなく諦めた。そして、「ここで許して」と低めの葉に下された。
蜘蛛なのだから木に登ることなんてたやすい、それくらい蔵之介も分かっていたはずだ。
なのに怖いのを我慢して登ろうとしてくれた。優しく危なっかしい蔵之介を放ってはおけなかった。
海はその後も母親にたたかれていた蔵之介の事を放ってはおけず、何度も気付かれない様蔵之介の部屋の窓の外に張り付き見守っていた。側にいて見守っていられるならそれに越したことはない。
「分かったよ!契約する、キーパーになる!これで満足か?」
海は諦めたように肩を落とした。ビアンカにはなぜか見透かされている。それに抵抗したところで余計に変な突っ込みを受けそうで、今はそれは面倒だった。分かりやすい奴だとはよく言われたが、すごく不愉快だ。
「うん、ひとまず満足だ。これ以上の話は蔵之介のいないところにしたい」
ビアンカは目を細め海を見据えた。
海は嫌な予感がして背中がゾクリとする。
「大丈夫、警戒するような事ではないよ」
ビアンカはそういって、海の拘束を解くようピーに指示をした。
僕のいない所で……蔵之介は昨日ゼノスから聞いた、聞いてはいけない事を思い出した。僕に話してもらえないことはまだある様だ。でもビアンカはそれを隠そうとはしてい様だ。
言えないことは言わない。子供の頃よく言われた「大人になれば分かる」という言葉。最終的に調べるまで分かることはなかった。あれは説明したくない大人のいいわけだ。
きっとビアンカは時が来れば必要なことは説明してくれる。蔵之介はそれを信じて待とうと心に決めた。
蔵之介は海に歩み寄り
「これからよろしく!」
と手を差し出した。海は顔を赤くし、目をそらすと、ビアンカがにこにこと見てるのが目に入る。
「んだよ」
海が睨むように見て言うと、ビアンカは蔵之介の肩を抱き寄せた。
「蔵之介」
「なに?」
蔵之介が顔を上げると、ビアンカの唇に唇が触れた。
「なっ」
海は驚いてビアンカと蔵之介を引き離した。「えっ」と蔵之介は声を上げた。キスされたことへと、突然引き離されたことに驚いてのことだった。
「何してんだよ!未成熟の相手にそういう行為は重罪だろ!」
しかし、海はキーパーの手によってすぐさま拘束される。
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