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53話

「おい、いつの間に戻ってきたんだよ!?」 「先ほどからずっといました」  姿の消せるキーパーがいつ戻ってきたのか蔵之介も気付いていなかった。 「ビアンカ王に気安く触るだけでなく、蔵之介様との関係を邪魔する行為も重罪に値します。反省部屋へ閉じ込めて置いてください」 ピーが言って、キーパーは頷き海は再び手足を縛り連れていった。 「うるさい!いいか!お俺をお前が雇ったんだからな!俺はお前が蔵之介に手を出そうとしたら全力で阻止してやる!」  最後の方は声が遠くなり、その後も何か騒いでいたが何を言っているのかは聞こえなくなった。 「ビアンカ、今なんでキスしたの?」  蔵之介が顔を赤くして聞く。 「海が勘違いしないようにするためだ。蔵之介は僕のモノだからな」  ビアンカはそういって、蔵之介の頭を撫でた。  勘違いしないように。僕のモノ。  ビアンカの言った言葉を思い出し、天井を仰いだ。 「ビアンカってなんであんなに俺の事好きなんだろう?好きなんだよね?多分……」  部屋に戻り、蔵之介は撫でられた頭を確認するように触った。 「執着してるというと大げさな気もするけど、すごく気を使われてる気がする」  聞かれたゼノスは考えるように首を傾げる。 「執着……、確かに強い方かもしれません。ビアンカ王は生まれてすぐに王になる人材と選ばれ、教育を受けたそうです。最初のうちは皆と足踏み揃えて教育を受けていましたが、ある日からビアンカ王だけが、王になる為の修行をサボらず全てに全力になったと聞いています。指導に当たる師もビアンカ王に付きっ切りで指導していたそうです。それはどちらかというと、ビアンカ王の方が、強さか王座かに執着していた様だと周りから見えていたようです」 「そう、なんだ。……生まれた時から王になる人材」  即位式でビアンカが王になる事を信じている人達がいたのは、その姿や行動を 見ていたからだったのかと理解した。 「ビアンカってなんで王になりたかったんだろう」  蔵之介が言うと、ゼノスは考え口を開いた。 「王になりたかったわけではないと思います。ピーさんからお聞きしましたところ「王になる運命」だと、ビアンカ王は仰っていたようです」 「王になる運命?」 「はい、王になったらそれなりの実力と能力が必要になる。それを持っていな ければこの世界を壊してしまうと」 「ビアンカが言ってたの?」 「そうだと聞いています」  ゼノスが頷くと、部屋のドアが空いた。ゼノスは急なことに警戒し、ドアに糸を飛ばす。  するとドアと壁に糸が張られ、ドアが途中で止まった。

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