56 / 204
54話
「誰だ!?」
ゼノスが言うと身構え、蔵之介を後ろにかばうように立ち、左手を横に伸ばした。
「俺だよ」
声から察するに海だった。ドアから海の手がひらひらと振っているのが見えた。
ゼノスは、息をつき警戒を解いてドアへ近付いた。
しかし、ドアは勢い良く押されると糸がぶちぶちと切れ開いた。
「糸が弱いな。もっと鍛錬しろよ」
そういいながら海が入ってくる。
「僕だって頑張ってますよ!」
強く言うが、ゼノスはしょぼんと肩を落とした。
「“頑張った”じゃ蔵之介は守れないからな」
と海はゼノスの肩をぽんと叩き蔵之介のもとへ歩み寄る。
「お仕置き部屋に行ったんじゃ無かったんですか?」
「ん?ああ、抜け出してきた。昨日一晩中狭い暗い地下室に閉じ込められていたのに、今日まで閉じ込められてらんないよ」
海はソファにどかりと座った。
「なっ、何してるんですか!?」
横柄な海の態度にゼノスが声を上げた。
「何って座っただけだろ」
「ここは蔵之介様の部屋です、それをキーパーの身分でソファに勝手に座るなんてありえません!」
「いいだろ別に、な?」
海が言って、蔵之介を見ると蔵之介はまじまじと海を見ていた。
「なんだよ」
「本当に海なんだよね?」
蔵之介は海の顔を下からのぞき込むように見たり、髪や服、足元までまじまじと見ていた。
「どうだ?人の姿の俺はカッコいいか?」
海が自慢げに言うと、蔵之介はうなずいた。
「うん、海って人の形にもなれたんだね。どうして飼ってるとき見せてくれなかったの?」
蔵之介は興奮気味に言った。カッコいいかとの問いに本当に頷かれるとは思わず、海は照れて首の後ろを撫でた
「そりゃ見せるわけにはいかないだろ。驚くだろうし、ここでのルールでもやたらと見せるのは禁止されている。騒ぎになっても面倒だからな」
蔵之介の守護となった海は、契約時とは裏腹に嬉しそうだった。
蔵之介も久しぶりの友と会ったかのように話しができた。以前は会話も出来 なかったのに不思議だった。それだけ海は気さくな性格だった。
「でもなんで海は性成熟しても青いままなの?」
「お前、その話聞てないのかよ。それは」
海が言おうとして、ゼノスに服を引っ張られ止められる。
「その説明はまだ蔵之介様には早いって言われてるんです!」
ゼノスはこそこそと海に言うと
「ええ?大丈夫だろ、今時エッチのしかただって知ってるって」
海が含むように笑うと、ゼノスは顔を真っ赤にした。
ゼノスを気にせず蔵之介に説明を始める。
ともだちにシェアしよう!