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56話

「ちょっと!何してるんですか!?」  ゼノスが戻ってくると、声を上げた。  ピーを連れ立っている。 「海。ビアンカ王が話があるそうで「早急に来い」だそうです」  ピーは笑顔で、眉をひくつかせて言った。 「今いいところなのに、それにさっきのお前のやり方じゃ足りないんだよ」  海が不満そうに言うと、 「さっきの?」 蔵之介が聞くが、先ほどの”精子採取”を思い出し気まずく目をそらした。 海の首の後ろの服をピーが掴む。 「おい、あ、待って!まだ話してる途中でっ」  引きずられるように部屋を出て廊下に放り出された。そこにはキーパーが居て海は担ぎ上げられた。 「おい!」 「先に向かってください、私は少し蔵之介様に話がありますので」 とピーは蔵之介の部屋に戻り、ドアを閉めた。 「蔵之介様」  ピーは困ったような表情で蔵之介につかつかと歩み寄った。 「はい」  緊張気味に蔵之介は姿勢をただした。 「単刀直入に聞きます。蔵之介様はビアンカ様の事をどう想ってますか?」 「どうって、……王様?」 「それだけ?ですか?」  ピーに聞かれ、蔵之介はドキッとする。胸が少し痛んだ気がした。 「胸が痛みますか?」 「な、なんでわかるの?」  蔵之介は頬を赤くして慌てて手をわたわたと動かす。 「分かりますよ。ビアンカ様は貴方を意識されています。事あるごとに貴方の 心音がどうのこうのと、私が興味がないと言っても実況中継のように話してきますから」  一瞬時間が止まった様だった。蔵之介の顔は徐々に赤くなっていき口がわなわなと震えた。 「なっ、な、な……」  蔵之介は顔を真っ赤にして肩を震わせた。そんな、ビアンカに伝わるだけではなくピーにまで伝わっているなんて思いもしなかった。 「どうやら貴方は相当優しいお方で、ゼノスにも良くして頂いてると話は聞いています。さらにはゼノスに頼めばいいようなことも自分でしようとするとか」 「う、うん。ゼノスにもやるから言ってくれって言われた……。でも自分で今までやってきたし……」  蔵之介はうつむき目をそらした。顔はまだ熱く、赤くなっている。しばらく冷めそうになかった。 「いけません、ここでの生活に慣れるためにもゼノスに全て任せてください」 「でも、体洗われたり、拭かれたり着替えさせられたり慣れないよ!」  蔵之介が言うと、ピーはため息を着いた。 「いずれ慣れます、それをしなくていい代わりに貴方には役割が今後増えていきます。ですから生活のことはゼノスにお任せください」

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