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57話

 役割が今後増える。それは蔵之介も少しは理解していた。子供を生むこと。  実際どうやるものなのか分からないけど、妊娠と言えば人間も命が関わること。それだけ体への負担も多いと聞く。生活の事は出来なくなる場合もあるという。それくらいの事しか分からないけど。 「わかったよ……」  蔵之介はしぶしぶ返事をした。 「あと、もう一つ重要な事です」  ピーは蔵之介の前に膝をつき座った。 「蔵之介様から楽しそうな心音を感知すると、ビアンカ様がお妬きになります。もっとビアンカ様とも共に時間をお過ごしください」 「ビアンカと?」  蔵之介は驚き顔を上げた。 「ええ、ビアンカ様はお望みです」 「望んでる……?でもビアンカは忙しいんじゃ?」  ピーは頷く 「ええ、忙しいお方です。ですから仕事についてこられてもかまいません。それで知見を広げることもできます。ビアンカ様は仕事の合間にでも貴方に会いたがりますし、様子はどうかなど事あるごとに聞いてきます。貴方には何も言わないかもしれませんが、ビアンカ様は昔から付き合いのある私から見ても異常なくらい蔵之介様を意識しております」  ビアンカが、意識している。俺だけではない。それに蔵之介は少しほっとした。 「そ、そうなんだ。じゃあ俺から会いに行った方が良いの?」  ピーは少し黙って、周りに気付かれないほどのため息を着いた。 「いえ、蔵之介様が会いたいときで構いません。ゼノスには蔵之介様が会いたがったらいつでも部屋に着て良いと伝えておりましたが、今まで蔵之介様は会いに行きたいと仰らなかったと伺っております。王に会われるのは気を使われますか?ビアンカ様は貴方の心音から、接触を試みると緊張しているようだと。それを気にしてあまりお近づきになれない様です」  蔵之介はそれを聞いて袖口をぎゅっと握りしめた。会いたい気持ちはあった。けど会いたいというのは、迷惑をかけるんじゃないかと思い控えていた。胸がきゅぅっと締め付けられる。 「俺は、ビアンカに会いたいって言ってもいいんですか?」 「当たり前です。誰も禁止しておりません」 「そう、なんだ」  蔵之介はうつむき両手を頬にあてた。まだ顔が熱い。今まで部屋にいて、ふとビアンカは何してるかな?と想うことはあった。でもそれはあえて口には出さなかった。言ったところで分かるものでもないし。会いたいと言ってもビアンカは忙しく会えるとは思っていなかった。 「じゃあ、今ビアンカに会いたいっていったら、会える?」

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