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63話 バードイート侵入

 海は余裕そうに鼻で笑って蔵之介の背中に手を回した。 「えっ」  蔵之介は驚いている暇もなく、海に片手で体を持ち上げられ、糸を使い建物の二階通路へ入る。  通路に入るとお姫様抱っこに持ち替えられ、蔵之介はその状況に戸惑った。何か危険なことが起きているのだろうけどこの状況は……。海の顔を見ると、真剣な姿にドキッとしてしまう。これじゃあまるで恋する乙女じゃないか?と蔵之介は心の中で自分で自分に突っ込んだ。 通路を走り、海はさらに上へ飛ぼうとするが、警戒し足を止めた。  見ると通路の先には、巨体の男が立っている。 「約束の物だ」  そういって、鶏が何羽もくるまれた網が、目の前に投げられた。 「何のことだ?」  海は片足を下げ後ずさる。気配を察し振り返ると後ろにもずらりと巨体が並んでいる。バードイートだ。それは蔵之介にも分かった。 「人間の食事が必要だから食べれるものを取ってこいと言われてなぁ、その引き換えに人間と交接させてもらう約束だった」  男は餌を前にした犬の様に唇を舐めた。 「約束だ。人間を渡せ」  その言葉と同時に海の周りに三人の人が現れた。  一人は見覚えのあるキーパーだ。  他の二人も同じ服を来ている。海と、蔵之介を守るように立ち身構えた。  後ろの巨体の群れが走り、襲い掛かってくる。そちらに二人のキーパーが即座に駆け出した。一人は緑の糸を飛ばし、もう一人は短刀を取り出した。 緑の糸は毒を絡めた糸だと座学で聞いた。  バードイ―ターに飛ばした糸は簡単にちぎられていく。毒がついてるとはいえ、それが体内に入る必要がある。それに体内に入ってからも回るのには時間がかかる。 「下手くそ」  海がつぶやく様に言うのが聞こえた。 それは糸を練るのが下手だという事だ。ゼノスの側でずっと練り方を見ていた 蔵之介でも糸の弱さは見て分かった。  キーパーと言っても全てが万全なわけではない。蔵之介は海の服をぎゅっと掴んだ。 「横暴が過ぎるな」  ビアンカの声がして、皆がその方向を見るが、その反対から巨体が糸で拘束された。  しかし男はフンと鼻で笑い糸をたやすくちぎり払う。ピーから伸びていた糸は簡単に千切れた。 「こっちもかよ」そう言いたげな海は器用で網の貼り方も上手い。なのに夜一人で鍛錬してるのを知っていた。だから実力は信頼している。  海が蔵之介に隠す様にこそこそとしていたが、ゼノスが規則を破ってると相談してきた。ただ、遊びに出てるだけではない。だから知らないふりをして過ごしていた。

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