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64話

「王はどこだ?姿を現せ!」  男が叫ぶがビアンカは姿を現さなかった。 「呑気な奴だな。目の前で人間が交接されていくのを眺めるのが趣味か?」  男は蔵之介に歩み寄り、一歩ずつ進んでいく。 「鳥と引き換えに蔵之介を奪いに来たって事か。でも、もう鳥はいらない。食事には不自由してないからな。交接なんてさせねーよ」  海は蔵之介を抱えたまま、先ほど居た庭から通路を挟んだ庭に移に降りた。そして別の二階通路へと飛んで移っていく。  ピーが、二人の後を追う蜘蛛に何度も糸をかけ、止めようとするがそれもたやすく切られる。他のキーパーも加勢するが、体格差のある体に糸が絡みついてもすぐにちぎられた。  蔵之介ったちの元に、周りから糸が飛んでくるが、キーパーがそれをはねのけてた。海も身軽にその糸をかわしていく。  向ってくるバードイーターも増え始め、海も困惑していた。逃げ道がどんどんふさがれつつある。糸を網状にし何度も抑え込もうとするが、それもたやすく払いのけられる。 「力の差がありすぎる」  海が自分の糸でも切られるのをみて、その力を理解した。何度か攻撃を仕掛けるが、距離が縮まっていく。 「王は何をしてるんだ?」  海はぼやきながら城の中を飛び回る。先ほど声がしてからビアンカの姿を見ない。  海は素早いが、さすがに疲れてきているのか動きに遅れも出くる。  大きく育ったバードイ―ターは強い。蔵之介は恐怖を感じ、海の首に縋りついた。  海もどちらに逃げるのが得策か考え、あたりを見回した。  逃げてもすぐに後を追ってくる。建物をくるくる周り、何とか距離を保った。 「海さん、こちらへ!」  声が聞こえ、声の方を見ると先ほどまで居た中庭だった。いつの間にか一周していたらしい、ゼノスがそこに立っていた。  ゼノスの周りを見るが、何もない場所だ。逃げるには無防備過ぎる。しかし 「なるほど」  海は笑って、ゼノスの方へ飛んだ。周りを見回し、中庭を何度か飛んでゼノスの近くへと着地した。  海は蔵之介をおろし、しかし離れることなく抱き寄せた。  おびえる蔵之介に見せないよう海は抱え込んだ。 「それで逃げたつもりかぁ?」  巨体が何体も二階から何体もの蜘蛛が飛び降り、中庭へ走りこんで来る。 「だ、大丈夫なの?」  蔵之介は震えながら腕の中で海を見上げる。 「大丈夫です」  ゼノスが言った。ゼノスは何事も起きない、そう信じた態度でそこに立っていた。それでも恐怖があるのかぎゅっと手を握った。  キーパーが止めようと糸を飛ばすが、それをものともせず巨体が何体も走り込み、蔵之介の元に迫ってくる。半数が砂場に入り込むとそれを待っていたかのように、地面から何かが飛び出した。  巨体はそれは跳ね上げられ、宙に飛ばされた。

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