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65話
「くっ、しまった!?」
巨体から悲鳴があがる。その体には白い髪を持つ者が何体も巨体に牙を噛ませていた。
それは、生贄の戦いの時に見た光景と同じ。
しかし、その数は半端ない。ビアンカに似た白い髪の白い衣の者たちが、衣と砂を翻し次々とバードイ―ターに襲い掛かっていく。
「あいつらには毒がある」
蜘蛛と砂が舞い、あたりを砂煙が包み始める。
「まずい、糸を張ってくれ」
海は蔵之介を抱きしめたまま一緒にかがんだ。それを聞いたゼノスがあたりにドーム型の網を張り、砂埃をさえぎった。
その後も次々と罠にかかっていったのだろう。悲鳴が聞こえ、巨体が落ちる音が続く。
「蔵之介。怖いか?」
海が腕の中で震える蔵之介の背を優しくなでた。
「こ、怖い。けど大丈夫」
戦いを見るのは初めてじゃない。けど数が比じゃない。狙われているのは自分で、それから守ろうとしてくれている。何もできない自分が不甲斐なかった。
蔵之介が周りを見ると糸が張られ白い壁が出来ていた。外の様子は何も見えなくなっている。一度糸を貼り終わると、ゼノスは海に教えて貰った強い糸をさらに張れりめぐらしていく。
「ビアンカは何の蜘蛛なの?地面に隠れて獲物をとるやつだよね?」
記憶にある蜘蛛の姿が頭に浮かぶ。それはしなやかで白くて綺麗な蜘蛛だった。
「シカリウスだ」
海が答え、ゼノスが話をつなぐ。
「砂の中に身を隠し、獲物を捉える種です。本来獲物を捉えるだけですが。ビアンカ様達はそれに対術を合わせ相手を打ち上げ抵抗してるまもなく牙を噛ませる技を持っています。
これはそれだけ鍛える必要もあり、ビアンカ王と共に育った者だけができる技です。毒も強く、相手を死に至らしめる事も出来ます。
知られていると罠を避ける者もいますが、彼らはまだ若いです。今回の場合、我々の領地で数が多い。どんなに頑張っても避けることはできません。
もし敵にまわりそうなシカリウスの領地に入るときは注意してください」
ゼノスが笑顔で言って、蔵之介は頷いた。今のゼノスはとても頼もしく見えた。
「お前はやらないのか?」
「私はシカリウスではありません。毒もないですし、ご存じの通り足も遅いし、糸も上手く編めないし……。できることは補助程度のことです」
「そうだったか?」
海は言って軽く笑った。
「お前はもう糸は編めるだろ。それに体格的にも戦う必要はない。蔵之介の世話も十分できてる。どこに問題があるんだ?」
ゼノスはそれを聞いて驚いた顔をした。
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