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66話

「なんだ?俺の教えた糸の編み方を信用してないのか?」 「いえ、褒められると思ってなかったので……」 ゼノスは照れて、手を胸元でもじもじさせていた。  それから数分経ち、あたりはざわつきはおさまり始めた。  誰かが指示を出し、状況を確認しているようだった。 「三人とも、無事か?」  ビアンカの声が聞こえる。 「ビアンカ様、蔵之介様は無事です。三人とも怪我はありません」  ゼノスが答えるとビアンカのホッとした声が聞こえる。 「そうか、良かった。しかし、まだ事は納まっていない。海、今のうちにキーパーと共に蔵之介を部屋に連れて行って守っていて欲しい。部屋に糸を張って厳重に蔵之介を守ってくれ。まだバードイ―ターのリーダーが出てきていない」 「分かりました」  海はゼノスと目を合わせると、ゼノスは頷き、糸の壁を解いた。  まだ砂埃は少し舞っていたが、だいぶ薄れていた。  蔵之介が立ち上がると、ビアンカは歩み寄り、頬にキスをした。 「大丈夫だ、信じて」  その言葉に蔵之介はうなずいた。 「キーパー達は勝手についていく」 「分かりました」  ビアンカは海の耳元に顔を寄せ何かを伝えた。それに海は頷く。  海は再び蔵之介を抱え上げて走り、二階、三階へと昇って行った。  ゼノスも遅れながらその後を追った。  部屋につき、蔵之介を下すと部屋のドアと窓に糸を厳重に張り巡らせた。  海の糸は蔵之介も触らせてもらったことがあるが、本当に丈夫で引っ張ってもそう簡単に切れるものじゃなかった。先ほどは戦ってる間に練っていた糸だから少し弱くなっていたけど、安全な場所で冷静に編める糸なら強力なものが張れているはずだ。  海は何度も糸をかけ、ドアの近くで見ていた蔵之介の元に戻った。 「これで大丈夫だろう。王でも破れない」  海が自慢げにいうと、部屋の中に不気味な笑い声が響いた。  とっさに海は蔵之介を背中に隠す。  部屋についたことで安心して油断していた。既に部屋の中にいるとは思っていなかった。蔵之介は辺りを見回すが姿は見えない。  ベッドある屏風の奥から、巨体が現れた。海はベッドはカーテンがしまっていた事を思い出し舌打ちした。  その姿に蔵之介は見覚えがあった。 「あ、あの時の」  蔵之介はそういって、海の腕をきゅっと掴んだ。 「知ってるのか?」 「生贄の戦いの時、ビアンカが最後に倒した相手……」 「あいつか」  海は警戒し、身をこわばらせた。海も遠くから戦いは見ていたが、誰が戦っているかには興味なく、顔は見ていなかった。

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