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67話 部屋への巨体の侵入者

 あの戦いは、事前に戦いが行われ強いものが選別され、少数に絞られる。  その絞られた強者同士の戦い。そして王となったビアンカが最後に倒した相手。それにかなう相手などビアンカしかいない。  キーパーも一人室内にいるはずだが、姿は現さずにいる。  巨体から放たれる威圧感に何もされていないというのに、蔵之介は動けなかった。  男から威圧感が徐々に迫る。 「蔵之介、逃げろ」  海も警戒し相手を睨み動かず言うが蔵之介は震え、立っていられなくなりその場に座り込んだ。  怖い……。  それを察し海は叫びながら巨体へ飛びかかった。  殴りかかる拳は圧を感じるが深くまでは入らない。  海の体は軽くはじき返されるが、糸を使いすぐに立て直し、頭に蹴りを入れる。 「弱いな」  足を掴まれ壁に飛ばされた。 「うぐっ」  背中を軽く打ち付けるが、キーパーの糸が伸び海の体を引いたおかげで強く打ち付けるのをかわした。  巨体はそれに気づき、 「もう一匹いるのか」  そう言ってあたりに蜘蛛の糸を張り巡らせた。動きを探り 「そこか」  と見つかり腕を捕まれる。キーパーは姿を消し微動だにしなかったにもかかわらず、そのまま床にたたきつけられ姿を現す。  その巨体の背に海は飛びつき、牙を剥くが皮膚が固く牙が入らない。 「牙が入らない!?」  海は大きな手に頭を掴まれ勢いよく投げ飛ばされる。  壁が大きくへこむほどに背中を強く打ち付け、床へと落ちた。  あれを牙で倒したって。嘘だろ……  海は背中を強打し声に出せず、起き上がろうしてもなかなか力が入らなかった。「まずい」そう思っても糸を出すが、近くに散らばるだけだった。 物の数秒の出来事だ。 「もう邪魔者はいないな」  巨体はにやりと笑う。その口には糸が引きくちゃりと音を立てた。 「蔵之介逃げろっ……」  海がどうにか声を絞り出すが、蔵之介は足に力が入らなかった。完全に腰が抜けている。 「や、やだ……来ないで……」  蔵之介は涙目で震えながら後ずさり、壁に背中がぶつかる。無力ながらに腕で顔をかばう。  巨体は笑いながらその腕を掴み、ベッドへ引っ張り体を投げた。 「王も入れないんだったな。じっとしてればすぐに終わる」  男は口から粘着力のある糸を吐き出し、顔面を糸で固定した。 「んぶっ」  顔面を粘り気のある糸で包まれ、蔵之介ははがそうとするが手に糸が移り絡まっていく。 「んんっ!」  喋ることもできず、手も動かせなくなる。糸で前も見えない。呼吸もしずらく、呼吸が浅くなる。  そんな状況の中、服を破かれた。

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