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74話
「分かりました。でしたら治癒糸を部屋で出してください。お願いします。それが無ければ困る者も多いんです」
ビアンカは目だけでピーを見て、歩きながら手を上下に合わせる。それを離すと同時に、手の間に糸を引き、瞬時に大量の治癒糸を生成させた。そして立ち止まりピーにその糸を渡した。
「これで足りるか?」
「なんとかします」
「足りなかったら部屋でなら出す」
ピーが頭を下げ、ビアンカは部屋に再び向かおうとした。しかし、足を止め振り返る。
「ピー」
元の道を戻ろうとしていたピーは振り返ってビアンカの方を見た。ビアンカはピーに歩み寄る。
「今回の件、君は悪くない」
ピーは黙ってビアンカを見つめた。
「いいか、君は悪くない。そんな泣きそうな顔をするな、行けなくてすまない。皆の治療は任せる」
ビアンカは拳で軽くピーの胸元を打った。
そして部屋へと急いだ。
ピーは今自分がどんな顔をしているのか想像もできず、口元を抑えた。気付かないうちに涙が溢れていた。
ビアンカが自室のドアを開けると、蔵之介は顔を向けた。
「ビアンカ、もう終わったの?」
「ああ、終わった」
ビアンカはベッドに歩み寄るとゼノスは蔵之介から離れ、ベッドから降りた。
「ゼノス、助かった」
「はい」
ゼノスは嬉しそうにベッドを離れドアの前へ向かった。
ビアンカは上に羽織っていた衣を脱いで、薄手の襦袢姿になりベッドに入った。蔵之介の横に座るとそっと抱きしめる。
「待たせたな、寂しかったか?」
「少し」
蔵之介はビアンカの肩に頬を寄せよりかかる。
ビアンカの体は外の風に当たったせいか少し冷えていた。
「寒くない?」
蔵之介が聞くとビアンカは首を横に振る。
「蔵之介があったかいから大丈夫だ」
ビアンカは蔵之介の頬をそっと撫でて、唇を重ねた。
そのまま蔵之介の体を倒し、何度も唇を啄む。蔵之介はビアンカの背に手を回し求めるように抱き寄せた。
ビアンカはそっと蔵之介の帯紐をほどいた。それに気づき蔵之介はびくりと体が跳ねる。
「び、ビアンカ?」
「嫌じゃなかったらじっとしてて」
「うん……」
蔵之介は恥かしそうに顔を赤くし、ビアンカの滑らかな手が腰を撫でるのを受け入れた。
胸から腰、さらに下へ滑り太ももへと手が体をくすぐる。
「んっ」と蔵之介は体を捩ると、ビアンカは手を内股へ回しそっとそこを撫で上げた。
蔵之介は恥ずかしさと敏感な内股を撫でられたことでぞくぞくと腰を震わせビアンカの袖をぎゅっと強く掴んだ。
「嫌な感じはしないか?」
「うん、平気」
嫌な感じどころか気持ちよくておかしくなりそうだった。
「なんか、変……」
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