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84話 アダルトの宴

「多くの物に振舞われるのは、ここでの料理だが、蔵之介の分はちゃんと食べれるものを用意してるよ。皆、昨日のこともあるし蔵之介の顔を見れるのを楽しみにしている。無事な姿を見せてやってくれ」 「うん」  宴は、蔵之介の姿を見せまわりの人たちを安心させる為でもあった。ビアンカはまわりの事もしっかり考えている。その気遣いが、ビアンカのまわりに協力してくれる者を集めているのだろう。  夜になり、宴の席に向かおうと部屋を出ると丸一日ぶりだろうか、海が居た。 「海、怪我は大丈夫?部屋に入ってこないから話せなくて心配してたんだ」 「ああ、平気だよ。買い出しにも行けたし。なんの問題ない」  海は明るく見せるがちょっと元気は無かった。 「本当は肋骨が折れてます」  ピーが補足するように言った。 「言うなって!!」 「今は貴方には頼れません、それは把握しておくべきです。それでもキーパーとしての仕事はまっとうして抱きますが」  ピーが言うのを聞いて蔵之介はビアンカを見る。 「海を休ませられないの?」 「休ませるつもりだったが、本人の希望なんだ。今日の宴は人が多いから側に居て守りたいと」  海はいろんなことを勝手に話され不満そうだったが、蔵之介と目が合うと笑った。 「変な心配はするな。今日の宴は身内だけだし。お目付け役みたいなものだよ」 「そうだな、キーパーが侵入できない糸を張ったって噂は広がっている。昨日のことで海の評価も上がった。海が側にいれば気安く手出しする者もいないだろう。」  宴の席につく前に、ビアンカは蔵之介の方に向いた。 「蔵之介は扇子を使えるようになったか?」  ビアンカは扇子を広げて見せた。それは城に綺麗な銀と金色の蜘蛛と一匹の囚われた蝶が描かれている。それは、蔵之介が事前に受け取っていた扇子と対になっている絵柄だった。 「ゼノスと練習したけど。開くくらいしか出来なくて」  蔵之介は、食事前にゼノスに教わった通り扇子を素早く開いて見せた。 「それができれば十分だ。相手との話を終えたければそれを開き口元を隠せば拒否となる。それ以上話しかけてくるものはいない。事前に開いておけば、それだけで声をかけてくるものも居なくなる。話疲れたら開いて持っているといい」  蔵之介は頷いて扇子を閉じ、帯にさした。  宴が始まり、挨拶を終えると蔵之介と話したいと蔵之介の前に列が出来た。  今まで城の中を歩いているときに見たことある人もいた。普段声をかけてこないのは、安易に声をかけてはいけないというルールがあったかららしい。許されるのはこのような宴の席だけで、皆が我先に、覚えて欲しいと贈り物を持ってきた。

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