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86話
「うん、俺ここにきていろいろ成長できた気がする。ビアンカやゼノスと海がいるおかげで。心強いし、さっきみたいにいろんな人と話すのも怖くなかった。昨日、あんな襲われる様なことがあっても今日こうして安心してられるのはビアンカが側にいてくれるからだよ」
ビアンカはそれを聞いて再び、扇子で口元を隠した。蔵之介はそれを見てビアンカの顔をのぞき込む。
「ビアンカ、もしかして照れてる?」
先ほどから顔を隠してるのは何か見られたくない感情があるからなのだろうか?と蔵之介は、扇子内のビアンカの顔を見ようとするが、ビアンカに頬を指でつつかれる。
「じっとしてなさい」
図星だったのだろう、二人の時は隠さず見せてくれる表情だけど、人前では隠したい所なのかもしれない。
ビアンカのそんな姿は新鮮で、蔵之介も笑いそうになり口元を扇子で隠した。
それから数日、蔵之介は毎晩ビアンカと共に過ごした。時折、怖い夢をみて夜中に目を覚ますことがあったが、ビアンカがすぐに気づき抱きしめてくれていた。そして蔵之介が眠りにつけるまで背中を優しくなでてくれるので蔵之介も夜中に目を覚ますことも減っていった。
海も療養の為にあまり顔を合わせることはなかった。食事の買い出しには行ってくれている様だ。それすらも休んで欲しいけど、蔵之介の食事の問題にもなる為それだけは海自身が行くと言い張っていたらしい。
怪我がだいぶよくなる頃には蔵之介にも新しい部屋が与えられ、海は部屋に戻ってきた。しかしどこか元気がなかった。声をかけると明るく返してくれるが生返事の様な、心ここにあらずといった様子だった。
「海は大丈夫なのかな?」
蔵之介はゼノスに小声で問う。
「大丈夫です。でも戦いの後から少しおかしいんです。何があったか聞いても答えてくれませんし。ビアンカ様にも話を聞くよう言われているのですが、何度聞いても話してくれなくて」
海はそれを聞いてか否か突然立ち上がり部屋のドアを開く。
「ちょっと、ビアンカ様の所に行ってくる」
それだけ言うとドアを閉めて出ていった。
「ビアンカ様?」
蔵之介は驚いてゼノスを見る。
「初めて様づけで呼ぶのを聞いた気がします」
ゼノスは驚いた様に言ったが
「でも今は王をつけるのが正しい呼び方です」
ゼノスはそれをただす様に言ったが間違えた本人は既にいなかった。
海はビアンカの部屋のドアをノックするとドアが開いた。
ピーが現れ、海の顔を見ると「どうした?」と問われる。
「ビアンカ様に話があります」
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