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95話 次の日の朝
しかし、ビアンカの手が優しく頬をなでた。
「昨日はすまない。説明もそこそこで、無理をさせてしまったようだ。前回もそうだったが、人間はすぐに意識を失うんだな」
「えっと、あの」
確かに初めての感覚で戸惑う所は多く、意識を無くしたのも体力がない体と思うけど。
でも王は優しく痛い思いも一切しなかった。無理だったなんて思っていない
「そんなの。すごく気持ちよくて。その、むしろ体力無くてごめん」
ビアンカはそれを聞くと微笑み、体を包む糸を撫でた。
「この糸は癒やしの効果がある。戦闘での負傷や疲れにも効く。まだ体がだるいようならこのままでいるといい。疲れが取れたらゼノスに声をかけて。ほどいてくれるから」
「うん、じゃあもう少しこのままでいるよ。あったかくて心地いい」
蔵之介は優しく微笑むビアンカを見つめた。
ビアンカは名残惜しそうに蔵之介の頭を撫でてから起き上がり、服を整えた。
「それじゃあ僕は王としての役割があるから行くよ。何かあれば心音で分かる。すぐに駆けつけるよ」
ビアンカはそういって部屋を出ていった。
白い長い髪を最後まで眺めて、目を閉じた。
糸が暖かくてうとうとしてしまう。
昨日のことを思い返し、気持ちよさと、幸福感。そしてビアンカの唇、合わせた体、起きたことが鮮明に思い出されて恥ずかしくなり体が熱くなった。
ふと、お腹を撫でる。昨晩確かに体の中に糸を出された。
しかし今はなにも感じない。違和感もない。
こんなに違和感ないものなのかな?そう思いながら目を開けると、ゼノスがベッドをのぞき込んできていた。
「あっ」
ゼノスは思わず声を上げる。
「あの蔵之介様、糸ほどきますか?」
「え、あ……うん」
まだ起きる気はなかったけど思わず頷いてしまった。糸がほどかれていくと、中はまだ裸だった。
「お風呂に入られますか?」
ゼノスは蔵之介のまわりに綿の様に広がった糸を回収して箱につめていく。蔵之介はそれを少し広い眺めるときらきらと輝いていた。ビアンカは光って見えていたけど、この糸自体がやはり光ってるのかもしれない。
「……この糸何かに使うの?」
ゼノスは蔵之介が糸を見てるのに気づき頷く
「はい、ビアンカ様の治癒糸はとても丈夫で再利用が可能です。洗って市民に配布されます。蔵之介様の胸に張られた糸も、通信用として再利用されてますよ」
ゼノスがにこやかに笑う。
「そ、そうなんだ……」
治癒糸だから体に負担がなく心地よかったのかと分かったが。事後に使われた糸がどこかで使われてると思うと、恥かしくなった。
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