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96話

 ゼノスに体を洗ってもらい、タオルで拭いてもらうのも慣れてきていた。 「あれ、蔵之介様。脇の下に赤い跡が」  ゼノスに言われ蔵之介が脇の下、肺の横あたりをのぞき込むと確かに赤くなっていた。 「これって、……もしかしてキスマーク?」  昨晩の事を思い返すと確かにビアンカはここに時間をかけてキスをしていた気がする。 「キスマークってなんですか?」 「え」  蔵之介が驚いて黙った。なんて説明していいのか分からない。 「キスしたらマークがつくんですか?でも頬にはつかないですよね?」  普段からビアンカにキスをされているのを見ているゼノスがそう疑問に思うのも分かる。しかし、改めて説明するのも恥かしい。 「あ、あの、強く吸い付くとこうやって跡になっちゃうんだ」  蔵之介は顔を真っ赤にして答えた。 「そうなんですか、初めて知りました。痛くはありませんか?」 「うん、痛くはないよ」  蔵之介が答えるとゼノスはホッとして服を着せ始めた。 「何か体に変化があったらすぐに行ってください。ビアンカ王にすぐにお伝えするよう承っております」 「うん」と蔵之介は頷き、ソファに座った。本当に何の変化もない。 「俺は本当に妊娠したのかな?」 「はい、ビアンカ王は卵を産みつけたと仰っているので間違いはありません。これから冬季にはいりますので、出産は春ごろになるかと思います」   ゼノスは手帳を開き何か書き込んでいる 「季節で変わるの?」 「はい、冬に生まれると寒さで生き残れる個体が減ることもあります。蜘蛛のその風習が残り出産が遅れるケースもあるらしいです」 「あるらしいって、確実ではないんだね」 「そうなんです。母体が暖かさを保っていると子供がでても平気だと勘違いして出てきてしまう事もあるようです。なのでこの部屋もあまり暖かくはしないよう言われていますが、寒かったらその時は温度調節をしますので仰ってください。もし早く生まれても、ビアンカ様の糸でいくらでも対応は可能ですから」  ゼノスは言って、手帳のページをめくった。 「あと、この事は城の中の少人数しか知りません。キーパーも一部の者しか知りませんが、いつも以上にしっかり守る様伝えております。海は外で修行中なので伝えないようにとビアンカ様の指示ですが、会いに行く分には問題ないとのことです。  そして、食事の方ですがもし味覚が変わるようでしたらその都度仰っていただければ、食べやすいものをご用意いたします。無理して食事はなさらない様お願いします。  つわりに関しても女性の母体と同じく起きる可能性があります。起きた際は言っていただければ、対応をいたします。黙って無理はなさらないようにしてください。」

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