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二章 98話 蔵之介のわがまま
蔵之介の部屋の一角に並ぶソファスペース
蔵之介は腕を組みムスッとしてソファに座っている。
向かいにはビアンカが同じく腕を組み座り、対峙していた。
ピーとゼノスはこっそりと目を合わせどうしたものかと肩をすくめていた。
「俺が高いところが嫌いなのは知ってるでしょ!?」
蔵之介は言い放つ
「知ってはいるが、これはやってもらわなければならない。子供たちの成長の為に必要なことなんだ」
「絶対に嫌!」
蔵之介は涙目で訴えるが、ビアンカはため息をついた。
「なんでため息をつくの!? ため息をつきたいのは俺の方だよ!」
いつになく強気の蔵之介にゼノスは少し驚いていた。ビアンカにこんなに言い返す人も見たことがない。そもそもいるはずもないのだけど。
「ゼノスにも聞いたと思うが、絶対安全に対応する。下には蜘蛛の巣を張ってあり、バンジージャンプみたいなものだ。僕も傍にいて、何かあれば受け止める」
「受け止めればいいってものじゃないよ!」
蔵之介は浮かべた涙が目からこぼれそうになり、涙をぬぐった。
「ゼノスに聞いたけどこれは一般的にはやらないことなんでしょ!? それをなんで俺がやらないといけないの!?」
「それは王の子供だからだ。これは僕だけの意見ではなく国に関わる大臣たちの意見でもあるんだ。国を守る立場の者としては強い子孫を残し国を守る者を増やさなければならない」
「だからって俺がする必要ないじゃんか!」
「君がやらないと意味がないだろう。蔵之介のお腹の中に子供が居るんだから」
ビアンカは蔵之介のお腹を見て、顔に目線を戻す。
「君が経験したことは、今こうしている会話すらも子供は聞いている。脳がまだ出来上がっていなくても、体で覚えていくんだ。だからこそ今のうちにいろいろ教えていくことは大事なんだ」
「人間だってここまでする人いないよ!」
蔵之介は目頭が熱くなり、涙を堪えることもできずにぽろぽろ涙をこぼしていた。
一旦怒りがこみあげてしまうと、引っ込みがつかないこともある。ビアンカは目を閉じ、話す。
「少し冷静になろう。冷静になったらまた話をしよう」
「冷静だよ! 冷静じゃないのはビアンカだろ!」
蔵之介はこらえきれず立ち会があった。
「蔵之介? どこに行くんだ?」
蔵之介はドアへと向かい開いた。
「どこだっていいだろ!」
ゼノスは慌ててついていこうとするが、目の前でドアを閉められてしまう。急いでドアを開けて後を追った。
「ビアンカ王、考え直した方がいいんじゃないですか。他にもやり方があるのではないかと思います」
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