101 / 204
99話
「うーん」
ビアンカは顎に指を当て考えていた。
「ビアンカ王?」
「蔵之介があんなに怒るのは初めて見たな。あの心音も新鮮だった。」
ビアンカは、少しうれしそうに蔵之介の新鮮な反応にしみじみと思い返し笑みを浮かべていた。
「蔵之介様が行ってしまわれますよ」
ピーの言葉にハッとして立ち上がる。
ドアを開けるとキーパーが姿を現した。
「ビアンカ王、蔵之介様がゼノスと外に向かわれました。海の所の向かったのかと」
「キーパーは何人ついてる?」
「8人ほど」
「少し心配だが、あそこへの道は他のものが簡単には入れる場所ではない。問題ないだろう。そのまま守護を続けてくれ」
「はい」
キーパーは頭を下げ姿を消した。
「海のいる場所ってこの先で良いんだよね?」
「はい、でも良いんですか?ビアンカ王に向かうことをお伝えしなくて。」
「いいよ、どうせキーパーが伝えるよ。それに心音も聞こえてるんでしょ。どうせビアンカは全部分かってるよ!」
蔵之介は不貞腐れたように言って木の生い茂った。しかし、何もないわけではなく簡単に作られた石の階段を登っていく。
そこを数分歩き蔵之介は立ち止まった。
「この階段何段あるの?」
「わかりません。お疲れになりましたか?少し休みますか?」
「もう少し歩くよ」
蔵之介は元気なく肩を落として登り始めた。道を振り返って見るとそこはまた長い道のりだ。
ここを帰るのかと考えると、進むのが億劫になっていった。
「蔵之介様」
突然声がして振り返ると、キーパーのリーダーが姿を現しそこにいた。
「お連れしますか?このまま歩いていただいても構いませんが、このスピードで歩いていては“襲ってくれ”と言っているようなものです。何かあっても文句は言えません」
言われてみるとそうだ。蜘蛛たちはなんだかんだで動きが早く、人間が逃げ出して逃げ切れるものでは無い。もともと運動も得意ではないので、正直階段を上るのも疲れてきていた。
「じゃあお願いしようかな」
蔵之介がいうとキーパーは頭を下げて蔵之介を抱き上げた。
「ゼノスは背中へ」
とキーパーがかがむとゼノスはキーパーの首に抱きつき背中にしがみついた。
キーパーは立ち上がるとすぐにジャンプして、一歩で階段を10段以上とばしどんどん進んでいく。
「はやい」
風を切り進んでいくのは爽快感があり心地よい。キーパーは平らな地面につくと高くへはとばず、前への一歩を長くとり進んでいく。
「ビアンカもこういう気づかいができればいいのに」
蔵之介はまだ気持ちが収まらず、愚痴をこぼした。
「ビアンカ王も反対したんですよ。しかし、大臣たちが意見を変えなかったんです」
「え?」
キーパーはそういって、立ち止まり。蔵之介を下す。ゼノスもすぐに背中から飛び降りた。
ともだちにシェアしよう!