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100話 ヴィンター師の家
「ここです」
「もうついたの?」
蔵之介は下された場所で振り返ると、大きな門があり、上に“青風情泊”と書かれていた。蔵之介があのまま歩いていては半日はかかっていたんじゃないかと思う。
「これは?」
キーパーが居た場所を見ると、すでにそこにはキーパーの姿はなく、目線を少し下げるとゼノスの姿があった。
「ここが海さんの修行してる場所です」
ゼノスがそういうと、よこから別の聞き慣れた声が聞こえた。青っぽい人影が、何度かジャンプしてこちらに近付いてきた。近付くと海だとはっきり分かり、そして目の前で立ち止まる。
「蔵之介、何してるんだこんなところで」
海は全身から汗を流し、袖で顎に垂れる汗をぬぐった。
空気が冷たいというのにここまでの汗をかくなんて。しかし呼吸一つ乱れていない。
「海こそ何してたの?」
「俺は体力づくり。ビアンカ王はこの山の周りを一日中走り回って汗一つかかず呼吸も乱すことなく帰ってきたっていうから。ここのおっさんそういう事しか教えてくれないだぞ。もうちょっとやり方とか教えてくれてもいいのに」
海はそういいながら中を指さし、蔵之介たちに入る様促した。
中に入ると、庭の縁側で一人の男がお茶を飲んでいた。
「師匠、蔵之介が来ました。世話役のゼノスもいます。蔵之介、彼は師匠だ。名前はヴィンター。ビアンカ王はヴィンター師と呼んでいる」
「んー、キーパーもおるのー。8人か」
ヴィンター師は軽く顔を上げてつぶやいた。
「何人連れてきたんだ?」
「え、分かんない」
海が聞くと蔵之介のあいまいな反応答えた。海はゼノスに目を移すと。ゼノスは気まずそうに目をそらす。
世話役がこんなで大丈夫か?と思いながら海は蔵之介に目を向けた。
「ビアンカに言ってきたのか?」
「……」
蔵之介は黙ってうつむいた。その反応に海は何かあったと察したがすぐに聞くことはしなかった。
するとヴィンター師は海に手を差し出した。何かよこせとでもいう様に手を閉じたり開いたりする。
「はいはいバナナね」
ヴィンター師の座る横にはお盆があり、バナナがひと房置かれている。海はそこから一本とり、皮を半分まで向いて差し出した。
ヴィンター師はそれを受け取り、むにょむにょと口を動かしバナナを食べていく。
「蔵之介も食べるか?」
と海がバナナに手を伸ばすと、素早くヴィンター師に手をはたかれた。
「いった!」と海は声をあげ、ぶたれた手を振った。
何も言わないが誰にもやらんとでも言っているようだった。
「いいよ、お腹はすいてないから」
蔵之介はヴィンター師の横に座った。海は庭の地面に座った。ヴィンターが食べ終わって身のないバナナの皮を差し出すと海は受け取り、もう一本房からちぎって皮を剥いて渡した。
ヴィンター師はそれを受け取ると、蔵之介に差し出した。
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