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105話

「火は恐いですか?」 「別に平気かな、キャンプファイヤーとか見るの好きだし」 「泳ぐことはできますか?」 「出来なくはないけど、得意ではないかも」 「走ったりは?」 「運動もあまり得意じゃないし、いつも遅かったよ」 「ボールはどんな遊びができますか?」 「サッカー、バスケ、野球、テニス……とかかな、やったことあるのは」 「学校で得意な教科はどんなものでしたか?」 「どの教科もあまり得意じゃなかったかな。どれも平均点かそれ以下だったし」  その後もゼノスからいくつか質問が続き、蔵之介が答えるとゼノスは手帳に書き込んでいった。  一通り質問攻めが終わると蔵之介は伸びをして寝転んだ。 「ここってなんか落ち着くね」  蔵之介は目を閉じた。いつもゆっくり時が流れている気がした。 「ここは結界が張られていますから、この地を汚すものは入ってこれません。ここからはじかれた者は必然的に危険人物とされて警戒対象とされます。ですから凶暴な生き物も少なく、皆安心して過ごしています。動物も、虫も、植物も。それが安らぎに繋がっているのだと思います。」 「じゃあ、ゼノスはさっきなんであんなに緊張してたの?人の家が苦手って言ってたけど」  ゼノスは少し考えてから口を開いた。 「昔の話ですが、私には身寄りがありませんでした。その影響で、いろんな家をたらいまわしにされました。それぞれの家ではそれぞれのルールがあり、私は移動するたびにそこに合わせなくてはいけませんでした。そうしなければ宿主。主にそこで一番強い人に怒られたり、罰を浮けたりしました。「せっかく引きとってやったのに」「なにもできないじゃないか」って罵られたりして。なので私は家を移動するのが恐くなり、移動するたびに黙ってその家のルールを見ることにしていました。そうしないと、何も知らずにそれを犯すと罰を受けてしまいます。今罰を受けると蔵之介様にも被害がありますし。その習慣がずっとあって、だから人の家は苦手なんです。今回は海さんがいたので助かりました。海さんが対応して頂けていたので」  蔵之介はそれを聞いて目からぽろぽろと涙を流した。 「え、蔵之介様がなんで泣いてるんですか!?」 「ごめん、なんか悲しくなって。俺今日変かも、ずっと泣いてる気がする」  蔵之介は涙を袖でぬぐおうとすると、ゼノスがハンカチを蔵之介の頬に当てた。蔵之介はそれを受け取り、涙を拭いた。

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