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106話 海の空のぼり

「今の私は、大丈夫です。ビアンカ王も居ますし。ピーさんも海さんもいろいろ教えてくれるので助かってます。でも今日の海さん見たら私も少し頑張らないとなと思いました。海さんは蔵之介様を守るために修行頑張ってて、私はキーパーの様に蔵之介様を運ぶこともできません。足も早くないですし。何かできることをもっと増やしたいです」 「そうだね、俺も何かやろうかなって思った。ヴィンター師が見守っててくれる人が居るだけで自信に繋がるって言ってたし。今はゼノスがずっと傍で見守っててくれるし、そしたら何か出来そうな気がする」  蔵之介は笑ってゼノスを見た。するとゼノスも嬉しそうに笑った。 「はい、私はいつでも蔵之介様を見守っております。ビアンカ王も、ピーさんも海さんも」 「俺、生贄になってよかったかも。あまり楽しい人生じゃなかったし、生贄になって、何も成せずに蜘蛛に食べられて終わるのかと思ってたけど。今すごく幸せだと思う」  蔵之介は空高くを見つめた。 「でもやっぱり高いところから落ちるのは無理だと思う」  そう付け足すと、ゼノスは笑っていた。 「それは分かりました。調整してみます。どこまで対応できるか分かりませんが」 「うん、ありがとう」  夕方になると、海が帰ってきた。ヴィンター師も戻って来ると、縁側に座った。 「んーじゃあ、早速だが海上に上がってこい」 「上?」  海は上を見上げた。 「屋根の上か?」  海は屋根を指さした。 「そんな下じゃない、もっと上だ上空二十キロメートルくらいかのう」 「そんな上までどうやって行くんだ?」  海が聞くと、ヴィンター師はやれやれとため息をつき首を横に振った。 「上空二十キロっていけるの?」  蔵之介が聞くと、ゼノスは蔵之介に顔を寄せた。 「上空二十キロは成層圏で糸を最大限に生かせば行けないことはないと思いますが、生存はできません。なので冗談なのではないかと……」  蔵之介にこそこそと言ったが、海はそれを聞き逃さなかった。 「お前そこでこそこそ言わずにはっきり言えよ!」  海に怒鳴られゼノスは蔵之介の後ろに隠れた。 「海、怒らないでよ」  蔵之介はゼノスをかばう様に手を横に伸ばした。 「俺をバカにしてるのか?」  海は腕を組みヴィンター師を睨む。 「仕方ないな、なら上空1キロに行ってみろ。そこに行くとここの結界を抜けるから空気の違いで分かるはずだ。そこについたら飛び降りてここに着地するんだ」 「上空一キロ……。そこから飛び降りる?どうやって?」 「それは自分で考えなさい」 「はぁ?」  海はどうしたものかと考え空を見上げた。 「蔵之介も経験することだ。お前も経験しておかないとな」 「まあ、そうだな」  海は話に流され納得していた。

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