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107話
海は最初に屋根に登りそこから周りの木を眺めた。そこから適当な高い木へと登っていった。
「さて、どうするかな?見守ろうか」
ヴィンター師は楽しそうに笑い海を見ていた。
海は自分が居る木から正面左の一番高い木と、そこに並ぶ左の二番目に高い木に糸を張り、木から飛び降りた。落ちて加速し、地面近くを通り振り子の要領で体を振り切り上空へと飛びあがった。しかし、大した高さも出せず海は叫びながら落ちていった。
「考え方としては悪くないな」
ヴィンター師はお盆にお茶がないことに気付きお盆を撫でた。蔵之介はそれに気付きゼノスに目を向ける。
「ゼノス、お茶を作ってもらえる?」
「え、はい」
ゼノスは立ち上がり、台所を探してとたとたと足音を立てて走っていった。
「お前は賢い子だな」
ヴィンター師はひげを撫でながら言った。
「そんなことはないです」
蔵之介は遠慮がちに言う。
ヴィンター師は嬉しそうに「ふふふ」と笑って海を見ていた。
5分ほど経ってゼノスはお茶を入れて持ってきた。未だに海は上に上がれていない。
お盆にのった急須から4つの湯呑に数回に分けてそそぎ入れた。一つに茶托を添えた、蔵之介に差し出す。すると蔵之介は小さな声で「ヴィンター師に先に」と言った。ゼノスは頷きヴィンター師の横のお盆にお茶を置いた。
蔵之介の元に戻り、もう一つに茶托を添え、蔵之介の横に置いた。ヴィンター師はお茶を一口飲んだ。
「なかなかいいお茶だな」
ゼノスは褒められ嬉しそうに頬を赤くし、蔵之介を見た。蔵之介も微笑み返して、お茶の熱を取る為息を2回ふきかけ一口飲んだ。
「あつっ、にがっ!」
それを見てヴィンター師は笑った。
「蔵之介様、すみませんあつかったですか?」
「大丈夫、冷まし足りなかったみたい」
蔵之介は笑ってお茶を置いた。
「このお茶は低温出しなんじゃよ。温度計があるはずだ。60度の温度で出すと渋みが出ない」
ヴィンター師が言った
「はい、次から気を付けます」
ゼノスは言って、湯呑を一つ取って何度か息を吹きかけ冷ます。
ひとくち口にすると眉を寄せ、唇をぎゅっと閉じた。
「んっ……苦い……」
ゼノスは涙目で言った。
海が何度か飛び上がるのを見た頃、門の方から足音がした。
「来たか」
ヴィンター師が言って門の方を見た。
蔵之介はのぞき込むと、ビアンカとピーが庭へ歩いてきた。
「蔵之介、迎えに来たよ」
ビアンカは言ってほほ笑んだ。蔵之介はそれを見てホッとするが、うつむき目をそらした。ビアンカが来てくれたことは素直にうれしかった。けれど、蔵之介はまだ気持ちの整理が出来てなかった。
「海は何をしてるんですか?」
ピーが海が木に登っていくのを見て言った。ビアンカもそちらに目を向ける。
「上空一キロへ登って落ちてこいって指示したんだが、あれじゃあいくら待っても無理そうだ」
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