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109話
海はとっさに体を返した。
「容赦ないなー」
とぼやくがまだ余裕はある。と海は木に糸を伸ばした。
この糸をばねに使えばなんとか食い止められるはず。
すると、後ろでビアンカの声がする。
「それでは駄目だ、足からも糸を出し、着地時クッションにして」
「は?」
海は意味がわからないと言った声を出した。
足から糸なんて出したことない。足から出すなんて考えたこともなかった。
海は集中して足から糸を出そうとしたが、どうにも上手く扱えず、糸は散って落ちた。
「どうやるんだよ!!?」
海は手の糸を縮め、なんとか地面への叩きつけられるのを回避しようとするが、もう間に合わない距離にあった。
叩きつけるのを覚悟し、目を閉じると、体は何かに触れはずんだ。
海が目を開けると、ビアンカがさかさまに立っていた。数秒経って自分がさかさまなのだと気づいた。
「わけわかんねえ」
自分の状況を確認すると、そこにはビアンカの生成したであろう網が張られていた。それがクッションとなり助かった様だ。
海はため息をついて糸から離れ地面に降りた。
「なにか怒ってるのか?」
ビアンカが目を合わせようとしないのを見て海は聞いた。
「別に怒ってはいない」
「じゃあ不機嫌なのか、蔵之介に無視されたのか?」
海が茶化す様に言うと、ビアンカ無視して歩き出した。
「返事位しろよ、図星か?」
海はつぶやいて後についていった。
ビアンカと海は庭に戻ると、蔵之介とゼノス、ヴィンター師とピーは呑気にお茶を飲んでいた。
「どうだった?」
ヴィンター師が聞くと、ビアンカは首を横に振った。海は
「どうやって着地したのか全く分かんなかったです」
と諦めたように言った。
ヴィンター師は「ふっふっふ」と含むように笑った。
「ほらな、無理やりやっても仕方ないだろ」
「ならなんでやらせたんだよ!」
海は叫び、ヴィンター師に歩み寄った。
「覚えるにも手順がある、考えなさい」
ヴィンター師は海を無視して、ビアンカに言った。海はそれを聞いて、そういう事かと理解し靴を脱いで家の中に入った。
ビアンカは立ち止まりうつむいていた。
ヴィンター師は蔵之介に無理やり嫌なことをさせても意味がないと言いたいのだろう。
ビアンカはそれを飲み込み縁側へと歩き、座った。
ゼノスは蔵之介を見ると、蔵之介は入れてあったお茶の一つを持って、ビアンカの元に向かった。
「ビアンカ」
ビアンカは呼ばれ、蔵之介の方へ顔を向ける。
蔵之介はビアンカの横に膝を折り座ると、蔵之介はビアンカにお茶を差し出した。
「ありがとう」
ビアンカはそれを受け取り、蔵之介を見ていた。
蔵之介は何か言いたそうにしているが、何も言えずうつむいていた。
ビアンカはお茶を一口飲む。
「あの、ビアンカ。今朝は、その、ごめん。怒って」
「かまわない。怒ってくれないと分からない事もある」
ビアンカはそういって蔵之介を抱き寄せた。
「ビアンカ……」
蔵之介はビアンカに抱きつき、泣きだした。
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