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118話
医師が出て行ってからビアンカに治癒糸を巻いてもらう。丁寧にまかれ両足を固定された。
「運動をするなら、海に頼んでおこう30分くらい海に付き合えばそれなりに体力づくりはできるはずだ。その間はキーパーとしても働いてくれるし、蔵之介も頼りやすいだろう」
ビアンカは下半身の身動きの取れない蔵之介の体をベッドに寝かせ布団をかけた
「そうする。やっぱ運動しないと衰えるよね」
蔵之介はため息をついた。もともと運動もしてなかったし、
「安心していい、蔵之介が寝たきりになっても僕は面倒をみるよ」
ビアンカは笑顔で言った。
「寝たきりにはなりたくないかな。ビアンカと一緒に歩きたいし」
バードイートの件もあり、やろうとは思っていたけどなんだかんだ自分のなかで理由をつけて実際は何もしていなかった。蔵之介は頑張ろうと心に決めた。
次の日、朝食を終えるとビアンカに実践場に行くよう言われ、授業の前に向かった。そこには海が待っていた。
「見てくれ蔵之介!」
と海は嬉しそうに言って、蔵之介から少し距離をとり足元から糸をだした。すると体が持ち上がり、糸を足場に海は上へと登っていく。
「すごい、もうできるようになったの!?」
蔵之介が言うと、海は自慢げに「にしし」と笑った。
「いいだろう!」
そういって糸から飛び降りる。
「あれ」
蔵之介の隣で見ていたゼノスが声を出した。海が乗っていた糸がそのままそこに残っている。
「なんでこの糸が崩れないんですか?」
「え、ああ、師匠にも聞かれたけど、どうやったら崩れるんだ?」
逆に聞き返されゼノスは混乱していた。本来の糸の乗り方は、糸に強度を保ってバランスよく乗ることで糸がしっかり張り、上から降りるとそのバランスが取れ糸が崩れる仕組みだ。
「もしかして伸ばしながら、糸を固めてるんですか?」
「ああ、俺はそうしてるけど」
海が言うと、通りがかった者やまわりにいた者たちも残った糸が気になるのか寄ってきていた。
「違う種類の糸を混ぜて何本も出すなんて、どうやるんだ?」
「そんな事出来たら、なんでも自分で作り放題だろ。交互に出してるんじゃないのか?」
「どっちにしてもそんなこと簡単にできる事じゃない」
海は質問攻責めにあい、人々に囲まれていた。
蔵之介たちはそこから少し離れ、それをしばらく見ていた。
「海は何しに来たんだろう?」
蔵之介はつぶやくように言った。
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