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122話
「飛ぶよ」
「待って!」
と蔵之介がいうが、それと同時にビアンカは気にせず飛んだ。
「待ってって言ったのに!」
「ごめん、蔵之介もう飛んでしまった」
目を閉じているので分からないが、体が落ちて加速して行ってるのが分かる。
「こわいこわいこわい!」
蔵之介は叫びながら落ちていく。
ビアンカはしっかり蔵之介を抱きしめて。
残り100mの高さで、ビアンカは糸を浮遊させ、そこに着地した。
糸は膜の様に広がりただよい、ゆっくり地面へと降りていく。
「もう降りた?」
蔵之介が見るとまだ地面は遠かった。
「なんで降りてないの!?」
「いい景色だよ」
「景色なんてどうでもいいよ」
蔵之介は泣きながら叫んだ。子供の為だと分かっているが恐いものは恐い。でもビアンカが居なければこんなことをしようなんて思う事もなかっただろう。
地面に降りると蔵之介は足の力が入らずそのまま膝をつく。
ビアンカも一緒に座り、体をつないでいた糸を外した。
「お疲れ様です。よかったですね、降りれて!」
地上で待っていたゼノスが駆け寄ってきた。嬉しそうに言っているが、蔵之介が安心して降りたわけじゃない。
「恐かった……」
蔵之介は泣きながら言った。
「もうやだ、帰る。」
ビアンカは上空を見上げた。
「もう少し上から飛んで見てもいいと思うが」
「やだ!帰る!」
蔵之介は怒って、ゼノスに抱きついた。その姿を見て、ビアンカは難しそうだと察し蔵之介の横に膝をついた。
「分かった今日はここまでだ。蔵之介、よく頑張ったな。好きな食べ物を準備させるよ」
ビアンカに頭を撫でられほっとして、ゼノスから離れた。ビアンカは腰の抜けた蔵之介を抱きかかえ、城へと向かった。途中海の元にも立ち寄った。
「おお、来たか。どうだった?」
「ちゃんと飛び降りられましたよ」
「それは素晴らしい」
縁側に座るヴィンター師は頷いた。
蔵之介はビアンカを見る。けしてちゃんと降りれた分けじゃない。ずっと目を瞑っていたし、その行為に効果があったのかは全く分からない。けどビアンカは「できたと」言ってくれて、ヴィンター師も褒めてくれている。
蔵之介はそれが嬉しくもあり、少し後悔があった。少しくらい目を開けていてもよかったかもしれない。
海は糸を出す練習をしたあとで、糸を出しすぎて室内で倒れていた。
「海、大丈夫?」
「ああ、大丈夫少し休めば元気になる」
そういいながら海はバナナを食べていた。
糸を出すには栄養が必要らしい。
「それよりどうだった?飛び降りた感想は」
「ずっと目を瞑ってたから一瞬だった」
蔵之介が言うと海は笑った。
「それで意味があるのか?」
「わかんないけど、ビアンカも褒めてくれたし次は少し目を開けてみる」
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