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123話

 蔵之介が言うと海は身を起こした。 「もう一回やるのか?」 「うん、来月もう一回やるんだって。どうしても嫌なら良いってビアンカは言ってるけど。やった方がいいならやりたいし。でも恐いから……」  蔵之介はしょぼんと膝を抱えて座った。 「偉い偉い、挑戦は大事だぞ。ビアンカ王もいるから落ちることはなかっただろ」 「うん、それは平気だった」  それを聞いて海は少し考えた。 「そうだ、飛び降り記念パーティしよう」  海は急に元気になり立ち上がった。ネーミングが少し危うく聞こえ、何をするか分からなかったが、蔵之介は笑って頷いた。  ビアンカと蔵之介とピーとゼノス、ヴィンター師も加えて海は鍋を振舞った。 「何ですかこれは」  ピーが聞く 「鍋パーティーだよ。蔵之介、そっちの鍋は虫しか入ってないから気をつけろよ」  鍋は二つ用意され、一つには人間用の食材、もう一つには蜘蛛の世界での食材が入っていた。海は言われれば大体のことをこなしていた。料理も特別というわけではないが、いつもおいしい。  そして、海がいると明るく楽しくなる。ゼノスもそれを感じてか、海が居るときはいつも楽しそうだった。 「蔵之介これはんだ?」 「それは豆腐だよ」  ビアンカは「とうふ」とつぶやき、箸で取ろうとしたが崩れて鍋に落ちた。 「俺が取るよ」  と蔵之介は自分の箸で落ちた豆腐を取り、ビアンカの器に入れた。 「せっかくだからこれも。これはマイタケで、これはしめじ」  蔵之介が取り揃えた器を渡すと、ビアンカはそれを見つめていた。 「どうしたの?」  蔵之介が首をかしげる。ビアンカは「何でもない、頂くよ」とほほ笑み言った。  蔵之介はビアンカが食べるのを眺め、ビアンカがそれを口に入れてハッとして顔を赤くした。  考えてなかった。これって関節キス……  顔を赤くしている蔵之介を見て、ビアンカは蔵之介の頭を撫でた。  まるで子ども扱いをしている。その手に蔵之介は思い付き、ビアンカの器を取った。 「じゃ、じゃあこれ。あーんしてあげる」  しめじを箸で一つとり、蔵之介はビアンカに差し出した。  ビアンカは訳が分からず、少し固まった。しかし、差し出された蔵之介の箸を拒否する理由もない。  ビアンカはそれを口に含み、箸に唇を滑らせ口に取った。  蔵之介はビアンカの唇のふれた箸を見て、体を熱くさせ耳まで赤くなった。  こんなつもりじゃ……。俺この後、この箸で食べるんだよね?  蔵之介は心の中で自問自答して恥ずかしさに肩を震わせた。 「ありがとう、ちょっと変わった味だけどすごく美味しかった」  ビアンカが耳元でささやき、蔵之介はぞくぞくと背中を震わせた。恥ずかしさでそれ以降顔を上げることが出来ず蔵之介はうつむいていた。  ビアンカに勝てる気がしない。

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