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124話 ビアンカへのマフラー

 次の日からまた教育の生活が始まった。毎朝海と何かしらで走り回って、蔵之介は人間の世界に居た時よりも活発になり走り回れるようになっていた。  体力もつくとできることも増えるという話はよく聞くが本当だったんだなと実感した。  その日はゼノスに糸を持ってきてもらい、ソファで編み物をしていた。体力とは関係なかったが、やりたい事にすぐに手を出せるようになっている。以前は、難しそう、失敗しそうと手を出すのを渋っていたがそれがなくなり編むことは出来ていた。  ゼノスはビアンカの出した治癒糸を絡ませて編み、毛糸ほどの太さにして蔵之介に渡した。 「やっぱ所々穴空いちゃう気がする」  編んだ場所を広げてみるとなん個所か糸が緩んでいた。編むことは出来ても上手くいくわけではない。 「大丈夫です。あとで調整すれば穴は目立たなくなるようです」  ゼノスは編み物の本を見ながら言う。  外は最近昼夜問わず寒くなっていた。ビアンカの作ってくれた服は暖かく防寒具は必要ないが、自分の着ている服はビアンカが作ってくれている。それなら返したいと蔵之介は編み物をしようと以前から計画を立てていた。  蔵之介が懸命に編んでいると、ドアがノックされた。ビアンカの声がして、ゼノスはドアを開ける。  蔵之介は慌てて編んでいたマフラーをクッションの下に隠した 「蔵之介、なにかを作っている様だけど順調か?」  ビアンカは部屋に入るとすぐに蔵之介を見つけ歩み寄り、蔵之介の隣に座った。 「うん、順調だよ」  蔵之介は笑顔で言う。  ビアンカは、蔵之介が後ろに隠すクッションをのぞき込んだ。 「だ、だめ。今は見ないで!」  蔵之介は体を返してクッションを抱え込んだ。 「蔵之介、僕は王だ」  子供の様にいうビアンカだが、蔵之介は頭だけ振り返る。 「そんなこと言ったって見せないよ」 「ゼノス」  ビアンカはゼノスに目を向ける。ゼノスは体をびくりとさせ、蔵之介を見た。 「あの……」 「何を作ってるのか見たい」  ビアンカが言うとゼノスは困ったようにもじもじしていた。 「だめ、後で見せるから!」  蔵之介がかわりに言う。 「僕の糸で編んでるんだろ?」 「そうだけど今はまだ駄目なの、下手だし完成したらちゃんと見せるから」  ビアンカは不機嫌そうに眉を寄せた。ビアンカのこんな表情はなかなか見ることはない。蔵之介は悪い事をしてるような気分になり心が揺らいだ。 「ビアンカ王、後でにしましょう。見せてくれると仰ってるのですから。」  ピーがフォローに入り、ビアンカはしぶしぶ納得して頷き部屋を出ていこうと立ち上がった。こういう時のピーのフォローはとても助かる。しかし、その後ろ姿は完全に元気を無くしていた。

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