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125話
「あの、ビアンカ?」
「蔵之介、完成を楽しみにしているよ」
ビアンカは悲しそうな笑顔を見せる。背中は寂しそうにも見えた。
そんな姿見せられたら、折れざる負えない。ビアンカはいつも俺のこと考えてくれてるのに、悲しい思いはさせたくない。
「ビアンカ、わかったよ。見て良いよ」
蔵之介は恥かしそうに編み途中のものを取り出した。
「でも上手じゃないし、笑わないでね」
ビアンカは振り返り、嬉しそうにほほ笑み「うん」と頷き蔵之介の横に座り直した。
「何を作っているんだ?」
「マフラーだよ」
ビアンカは編み物を知らない様だった。ここでは布を織る技術はあるけど、編み物というものがないらしい。服だけでこれだけ暖かいから、それ以上のものは必要ないとの事だった。
ある日の朝、それは特別な日。目を覚ますとベッドになにかの包みが置かれていた。それは赤と白のストライプ模様の柄でつつまれ、赤いリボンで止められ、リボンの結び目にはベルの形の飾りがついていた。
「これって……」
そう、今日はクリスマス。蔵之介は嬉しくなり、顔を赤くした。ゼノスが蔵之介が起きたのに気付きベッドのカーテンを開けた。
「おはようございます」
「ビアンカが来たの?」
蔵之介は置かれていた箱を持って膝に乗せた。
「はい、明け方ごろ来て置いて行かれました」
蔵之介はそれを聞くと、リボンを解いて包装紙を剥がした。
中の箱を開けると白い帽子と、マフラー、そして手袋が入っていた。
蔵之介はそれを身に着けベッドから降りて鏡の前に立った。
寝間着に、防寒着を着るのはちょっと不釣り合いだったが、とても暖かくて、心まで満たされた。
「ビアンカに見せよう」
蔵之介は嬉しくなっていうと、ゼノスは着替えを持ってきた。
「その前に着替えましょう」
急いで着替えて、蔵之介もプレゼントの袋を抱え部屋を出た。冷たい空気が蔵之介の息を白くさせた。
ゼノスも後から慌ててついてきた。蔵之介はビアンカの部屋の前につくとノックを二回した。
するとドアがすぐに開いた。ピーは何も言わずに頭を下げて蔵之介を部屋の中に通す。
「おはよう蔵之介」
ビアンカは部屋で書類を見ていたが、蔵之介を見ると体を向け手を広げた。蔵之介はその広げられた手の間に飛びついた。
「おはよう!」
蔵之介はビアンカの胸に一度顔をこすりつけてから離れた。
「クリスマスプレゼントありがとう!すごく嬉しい」
蔵之介は興奮気味で頬は火照りいつもより赤い。それが白い帽子と、マフラーに挟まれいつもより際立っている。
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