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127話

 蔵之介は突然のクリスマスの空気に浮かれ飾られたツリーを眺めていた。 「夜にはライトアップする予定だ。とてもきれいだよ」 「すごい、楽しみ」  ツリーを見ていると「蔵之介」と呼ばれる声が聞こえる。下を見ると海がそこにいて、ジャンプして壁を伝い三階まで上がってきた。  下で見てみないか?通路の手すりに乗り、海は手を差し出した。 「あー、見たいけど……」  蔵之介はビアンカを見る。 「見てくるといい」  ビアンカはいうが蔵之介はマフラーの端を持ち上げた。 「今繋がってるから」  海は蔵之介のマフラーからビアンカの首にマフラーが繋がっているのに気付き怪訝な顔をした。 「なんてものつけてるんだよ。外せばいいだろ」  海が蔵之介のマフラーに手を伸ばすが、ビアンカは蔵之介の腰に手を回し、引き寄せた。 「それは駄目だ。蔵之介一緒に降りよう」  ビアンカは蔵之介を抱き上げ、通路の外へと飛び出した。蔵之介はビアンカの首に抱き着き目を閉じた。  ビアンカは「見てくるといい」と言ったのに、いざマフラーを外されそうになると外すのは嫌がっている。これは海をからかっているかな?と蔵之介は考えていた。  下に降りると、蔵之介は地面に下されやっと目を開ける。下から見上げるクリスマスツリーは想像してたより迫力がある。 「すごい」  海も降りてきて、蔵之介の横に着地する。 「蔵之介は手すり越しなら下を見るのは平気なのか?」 「うん、ちょっと怖いけど手すりがあれば平気かな。スカスカで頼りないのだと恐くて近付けないけど、ここはしっかり石で作られてるし」  海は「そうか」と短く言って蔵之介の頭を撫でた。 「この帽子は?」 「ビアンカに貰ったんだ。手袋も」  蔵之介は嬉しそうに海に見せた。 「ふーん」  と海は興味なさそうに言って、ポケットを探りなにかを取り出した。 「これ俺からのプレゼントだ」  海が差し出すと蔵之介はそれを受け取ろうとする。しかしその直前にビアンカにが取り上げた。 「おい」  海が言うと、ビアンカは蔵之介を抱きしめた。 「海、ここで蔵之介に贈り物をする時は僕を通すのが筋だ」 「え、ああ、そうか」  海は言うと突然、海の周りにキーパーが現れる。海はそのキーパーに捉えられた。 「おい、まて、忘れてたんだって」 「一時間閉じ込めておけ。今日はクリスマスだから人の出入りも多い。キーパーの仕事もしてもらわないといけない。大目に見るているだけだということを忘れるな」  ビアンカに言われ、海は「はいはい」とやる気のない返事をして連れていかれた。 「それには何が入ってるの?」  蔵之介が聞くと、ビアンカは小さい紙袋を手のひらに乗せ目を閉じた。ゆっくり目を開けるとビアンカはそれを懐にしまった。 「後で見せよう」  蔵之介は首を傾げた。ビアンカはどこか見せたくなさそうだった。

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