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129話 屋根の上でのひと時

「ここは平気か?」 「海が掴んでくれてれば平気」  蔵之介の目は充血して赤くなっている。 「こんなに泣いてるのにビアンカは来ないんだな」  海が言うと、蔵之介は「忙しいんだよ」と返す。 「ここも怒っていいんだからな。なんで仕事優先なんだ!って」  海が笑って言うと、蔵之介は鼻をすすって頷いた。 「なんで俺の所に来てくれないんだろう」  蔵之介がつぶやくと、「誰か待ってるのか?」とビアンカの声が聞こえる。 「え」と振り向くと、ビアンカが真後ろに立っていた。 「ビアンカ、なんで?」  蔵之介は驚いてビアンカを見つめるが、目が赤いのを思い出し前を向く。 「蔵之介の姿が見えたから」  ビアンカは言って蔵之介の後ろに座った。海の手をどけ蔵之介は抱き上げる。蔵之介はビアンカの足の上に座らされた。 「ええ、海が蔵之介様の腰を抱いているのがしっかりと見えました。」  その言葉に海はびくっと肩を震わせ後ろを見るとピーが立っていた。 「蔵之介泣いていたのか?海に何かされたか?」  ビアンカは蔵之介の頬に手を添える。 「大丈夫、優しくされて安心しちゃって」  蔵之介が言うと、ビアンカは蔵之介の頬にキスをした。 「それで僕を待ってたのか?こんなに泣きはらして。泣いてる時、僕に傍にいて欲しかったのか?」  ビアンカに見つめられ、蔵之介は顔を赤くする。 「その、そう……って言ったら困る?」 「全然困らないよ。次からは来るよ何があっても」  ビアンカも優しい。忙しいなら来なくてもいい。そう思ってるけど、傍に居て欲しい時もある。  蔵之介はためらいつつビアンカの首に抱き着いた。 「忙しくなかったら来て」  蔵之介がビアンカの耳元で言うと、ビアンカは頷いた。 「分かった。必ず」  ビアンカは蔵之介の頭に手を回し、そっと蔵之介の頬に頬を寄せた。 「言っとくけど俺は何もしてないからな。それより俺のプレゼントちゃんと蔵之介に渡せよ!」 「蔵之介の心音を聞けば、海が何をしてるかくらいわかる。あと、海が蔵之介を抱き寄せると海の心音の方がうるさいからもう少し静かにさせるんだな」  ビアンカは蔵之介の背中を撫でた。  そうか、ビアンカは心音で俺が安心してるのを分かってるんだ。だから危険な状態じゃなければ、それで判断してどうするか決めてるんだ。  今傍に来てくれた事はすごく嬉しい。ゼノスと海が居れば安心は出来たけど、ビアンカが傍にいるとすごく心が熱くなる。 「お前俺の心音まで聞いてるのかよ!?」  海が顔を赤くして言う。 「聞きたくて聞いてるんじゃない。聞かれたくなかったら蔵之介に近付かなければいい」  ビアンカはしっかりと蔵之介の腰を抱きしめて居る。

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