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130話
これもビアンカは俺が屋根の上で恐がっているのを分かっててしてくれてるんだ。
そんな些細なやさしさに気付くとどんどんビアンカに心を惹かれていく。
そんな事されたら、ビアンカに甘えすぎてしまいそうだ。
言い合う二人を横目に蔵之介は顔を赤くしていた。
ビアンカは何度か言い合った後、きりがないと蔵之介に顔を向けた。
「蔵之介、あまりここに長居はしない方がいい。屋根の上は狙われやすい」
蔵之介は頷いた。
「そろそろ仕事に戻るの?」
「うん、蔵之介とずっと一緒に居たいけどね」
ビアンカは蔵之介を抱え上げ、屋根からおり三階の通路へ入った。そこで蔵之介を下した。
「ありがとう」
「お礼なんていらないよ」
ビアンカは蔵之介のおでこにキスをした。
後から海と、ゼノスも降りてきた。
「ピーは?」
ビアンカが聞くと「ビアンカ様」と屋根の上から声がした。
「それじゃあ僕は行くよ。蔵之介のことは頼んだよ」
とビアンカは屋根の上に戻った。
「何かあったのかな?」
「さあ」
蔵之介が聞くと、海は短く答えた。
「って、プレゼント取り返し損ねた!」
海が言って屋根の上を見るが、二人が神妙な面持ちで何か話してるのを見てそっと通路に戻った。
「次は必ず取り返す」
海はため息をついた。
「ごめん、次は俺も言うよ」
蔵之介はあたらめて自分は主張が弱いのだと気付いた。自分はわがままだと思っていたけど、海といるとそうでもないのかもしれないと思えた。
「ああ、頼むよ」
海が言って、蔵之介は笑って頷いた。ビアンカと海は仲が良くないのかな?と感じることもあるけど、結果的にはお互い認め合っている様にも見える。蔵之介にはそれが不思議でならなかった。
部屋に戻ると、そこは暖かく外の空気の冷たさを実感する。
ビアンカの作った服は暖かいから外の寒さを時々忘れかけるけど、今はもう息はいつでも白い。
夜になると部屋の前の通路からイルミネーションを見ていた。
「ビアンカとも一緒に見たかったな」
蔵之介が言うと海は不満げな顔をした。
「ビアンカとは夜いくんだろ」
「もう夜だよ」
蔵之介がいうと海は首を横に振った。
「もっと夜。夜中ビアンカが一緒に行こうっていうよ。今は俺がいるんだから俺を楽しめ」
「私もいますよ」
蔵之介が海の居る方とは逆の方向を向くとゼノスが蔵之介をみてほほ笑んだ。
「そうだね、今は三人の時間を楽しもう」
遠くの方がからずっと音楽が聞こえてくる。聞き覚えのある曲もあれば聞いたことのない曲もある。
夜風に触れていてもビアンカのマフラーと帽子と手袋は暖かい。
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