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132話

 海はそれを聞くと蔵之介から手袋を受け取り、片方は手に付け、片方はポケットにしまった。  蔵之介はゼノスにかぶっていた帽子をかぶせる。 「良いんですか?」  ゼノスは遠慮がちに聞いた。 「うん、今は二人が居てくれないと困るから、つけてて」  蔵之介の言葉にゼノスは頷いた。 海は窓とドアに糸を張り直し、部屋の中を確認した。 「今の所問題はなさそうだけど。こんなことをするのは確実に蔵之介を狙ってのことだろう。ここを出たほうがいいかもしれない」 「ビアンカも寝ちゃってるのかな?」  もし寝ているのだとしたら起こしに行くのが最優先だ。 「それは分からない。蔵之介の胸の糸は一方的なのか?ビアンカがどうしてるのか分からないのか?」  海に聞かれ、蔵之介は胸に手を当てた。そういえば考えたことがなかった。ビアンカの心音は聞こえたことがない。糸から何か感じ取れないかと目を閉じたが、何も起こらなかった。 「よくわかんない。」 「今の時間だとビアンカは王広間だ。プレゼント持ち込む客人の相手をしている。隠れながらそこに向かって、様子をうかがうか……」  海が言うと、ゼノスは首を横に振った。 「今は蔵之介様の身の安全を守るのが最優先です。ヴィンター師の元へ行きましょう。蔵之介様はそこにあづけてから調べたほうが良いと思います」 「そんなの嫌だよ、俺もビアンカの事心配だし」  海は「そうだ」とつぶやき蔵之介を見た。 「ビアンカは今日蔵之介の上げたマフラーはつけているのか?」  ゼノスは考えてから口を開いた。 「ずっとはつけてないと思いますが、つけてないときはピーさんが持っているのではないかと思います」 「だとしたら二人とも起きてるはずだ。あれもビアンカの治癒糸で出来てる。ピーが起こさないはずがない」  すると部屋のドアがノックされた。  蔵之介が返事をしようとするが海に止められた。  三人とも黙って警戒し、ゼノスは窓の方へ警戒を向けた。 「僕だよ、開けてくれるか?」  ビアンカの声が聞こえゼノスも海も警戒を解いた。 「待って」  蔵之介は小声で言って海の服を掴んだ。 「どうした?」  海も小声で返し聞くが蔵之介は「分からない」とつぶやくように言った。 「分からないけど、なんか違う気がする」  海は少し考えて、蔵之介の肩を抱いた。 「ビアンカ王、今蔵之介がどこにいるか分かりますか?」 「ここにいるはずだ心音で分かる」  海もその返事で違和感を感じたのか、蔵之介を見て頷いた。ビアンカなら今の状況で海が蔵之介を抱きしめている事まで分かるはずだ。それなのに、それを明確には言わない。普段のビアンカならやきもちを妬いた様にあれこれと状況を言ってくるはずだ。

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